カテーテルアブレーション
カテーテルアブレーションとは
心臓の中にカテーテルを入れて、不整脈の原因部位に対して熱傷ないしは凍傷を加えることで不整脈の根治を目指す手術のことです。
心臓の手術ですが、穿刺(局所的な刺し傷)での手術なので外科手術よりも体への負担は少ないものとなります。カテーテルは右股関節と右首の2か所から挿入します。
また、当院では極力全ての症例にて麻酔を使用しており、術中患者さんが寝ている間に終わらせられるように努めております。
カテーテル治療による1回目の治癒率は疾患に応じて異なりますが、およそ発作性上室頻拍(90~98%)、心房粗動(98%)、心室期外収縮(70%)、心房細動(70~90%)となります。
特にアブレーション治療で増加している疾患が心房細動です。
カテーテルアブレーションまでの流れ
外来受診
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不整脈の精査と治療の説明
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外来における術前検査(造影CT・経食道エコー検査)
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入院にてカテーテル手術
発作性・持続性心房細動の症状と治療
もっとも多い不整脈です。
脈が乱れる病気である不整脈という種類の病気です。
症状の強弱は個人差が大きく、無症状のため検診でたまたま指摘される方もおられれば、非常に強い症状のため救急受診される方もおられます。しかし、無症状の方ほど診断が遅れることで、心不全や脳梗塞などの合併症が増えるといわれております。
症状
動悸・息切れ・倦怠感
脈が速かったり、乱れたりしてドキドキや息切れを感じます。脈が早い人では1分間の脈拍(心臓の動く回数)が150回を超えます。(正常:50-100/分程度)
心不全
心臓の一部が動かなくなり、心臓の働きが20~30%位低下します。その結果、足や顔がむくんだり、息切れなどの症状が生じることがあります。不整脈が長期化してくると、より症状は悪化してきてしまいます。
脳梗塞
心臓の中に血の塊ができて、何かの拍子で脳にとんで血管を詰まらせます。
発症時は比較的大きな梗塞を起こされる方が多いといわれています。
治療
(1)抗凝固薬
血を固まりにくくする薬で心臓の中に血の塊ができるのを予防します。
脳梗塞の発症率が低下しますが、副作用として出血がしやすくなります。
高血圧症・心不全・糖尿病・脳梗塞の既往がある方、年齢が75歳以上の方が対象。
(2)抗不整脈薬
不整脈の発作を抑える薬です。
利点:内薬のみのためお手軽であり、患者さんよっては発作がほぼ抑えられる方もおられます。
欠点:副作用により脈が遅くなる不整脈がおこりめまいや失神をきたす方もまれにおられます。
(3)カテーテルアブレーション:心房細動の根治を目標とした治療です。
利点:不整脈を根治することで発作がなくなります。
仮に再発しても術前より発作頻度や持続時間が減ることが多いです。
術後経過がよければ、一部の方で抗凝固薬や抗不整脈薬の中止も可能です。
欠点:入院による費用・日数(3泊4日)、合併症
術後経過がよくても、加齢などと共に心臓の障害が進行すれば心房細動が再発し、2度目の治療を施行する方もおられます。
心房細動に対するアブレーション手術の適応について
必ずしも心房細動の患者様全員にお勧めするわけではありません。基本的には下記に当てはまる患者さんに対して相談としております。
- 不整脈の発作にて症状が強く生じる方
- 年齢が若年の方
- 抗不整脈を内服しても再発する方
しかし、最近ではより積極的に心房細動へ治療介入をすることで、心不全や死亡などの予後が改善することが報告されております。そのため、上記以外の方についても、状態に応じて治療の適応を相談しております。
アブレーション治療により何が減らせるのか
- 動悸や息切れなどの自覚症状
- 心房細動が原因による心不全入院
- 脳梗塞
よくあるご質問
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治療にかかる日数的には?
入院期間は3泊4日です。お仕事の忙しい方等については、治療対象の疾患次第で2泊3日での退院も相談をしております。
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治療後の活動制限は?
カテーテル手術は体への負担が小さいことから、午前中に治療された方は終了時間次第で夕食後には歩行再開となります。点滴については手術翌朝に終了予定です。
また、退院後の生活については、カテーテルを刺した部位の強い屈伸を2-3日、避けていただければ、ほかに制限はございません。強い肉体労働以外は退院翌日から就労していただいても大丈夫です。 -
手術は痛くないのか?
主に聞かれるのは下記の4点です。
- 術後、安静時の腰痛
- 尿管による疼痛
- 穿刺部疼痛
- 人工呼吸管理に伴う咽頭痛
点滴を病室で確保した後は、尿バルーンやその他の手術用の管なども含めて全て鎮静して寝ていただいた後に行います。心臓への通電も同様に麻酔で寝ている間に行いますので、麻酔薬の投与を終えて起きるまで痛みはなく手術を受けられます。
ただし、疾患の種類によっては鎮静により治療に支障をきたすことがありますので、必要に応じて術中、麻酔を弱めたり中止したりして覚醒いただくことがございます。
術後は穿刺部分からの再出血を予防するため帰室2時間後までは寝返りができません。座れるようになるは帰室後5時間からです。そのため、腰痛を伴う方がおられます。また、術中の麻酔に対して呼吸が止まらないように補助を行いますが、それの影響で咽の痛みを伴うこともあります。 -
合併症の頻度は?
軽度のものでは穿刺部が腫れたり、出血することがあります。合併症の種類に応じては外科的に血管の修復を要することもあります。
また、重篤な合併症として心穿孔、脳梗塞、ペースメーカ植込みなどが報告されています合併症の可能性は0%ではございませんが、当院ではアブレーション治療に伴った心タンポナーデ、脳梗塞・ペースメーカ植込みなどの重篤な合併症は発生しておりません。
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手術にかかる費用負担は?
入院費用は高額療養費の上限となることがほとんどです。上限は世帯収入によって変動することから、詳細をご希望の方は本館1階にございます医療相談窓口をご利用ください。
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不整脈のカテーテルアブレーション治療費用の目安
例:3泊4日入院で月をまたがないケース
【70歳以上の方】
区分 通常の健康保険 高額療養費現物給付制度利用の場合 年収約1,160万円~の方
健保:標準報酬月額83万円以上
国保・後期:課税所得690万円以上約28万円 ― 年収約770万円~約1,160万円の方
健保:標準報酬月額53万円~79万円
国保・後期:課税所得380万円以上約20万円 ― 年収約370万円~約770万円の方
健保:標準報酬月額28万円~50万円
国保・後期:課税所得145万円以上約11万円 ― ~年収約370万円の方
健保:標準報酬月額26万円以下
国保・後期:課税所得145万円未満57,600円 ― 住民税非課税の方 24,600円 ― 住民税非課税(所得が一定以下)の方 15,000円 ― 【70歳未満の方】
区分 通常の健康保険 高額療養費現物給付制度利用の場合 年収約1,160万円~の方
健保:標準報酬月額83万円以上
国保:年間所得(※)901万円超約70万円(3割負担) 約28万円 年収約770万円~約1,160万円の方
健保:標準報酬月額53万円以上83万円未満
国保:年間所得600万円超901万円以下約70万円(3割負担) 約20万円 年収約370万円~約770万円の方
健保:標準報酬月額28万円以上53万円未満
国保:年間所得210万円超600万円以下約70万円(3割負担) 約11万円 ~年収約370万円の方
健保:標準報酬月額28万円未満
国保:年間所得210万円以下約70万円(3割負担) 57,600円 住民税非課税の方 約70万円(3割負担) 35,400円
地域医療機関の先生方へ
当院では不整脈外来を設けております。
担当:月曜日 石澤、木曜日 外山、金曜日 津島
さいごに
100%ではないものの、色々な不整脈がカテーテル手術で治せるようになりました。
カテーテル手術をする適応があるかは個々の患者さんの年齢や他の病気の有無などによって異なります。手術を考える患者さんは、ご自身の状態や医師の意見を交えつつご検討ください。
当院では日本不整脈心電学会、香川県立中央病院と共同でアブレーション症例における登録研究を施行しております。患者様の個人情報を特定される内容は登録しませんが、お気になる方や登録を希望されない方は主治医へお問い合わせください。