日本赤十字社 高松赤十字病院

泌尿器科

基本情報

スタッフ紹介

スタッフ名 専門分野 認定医・専門医等

山中 正人

腎不全外科部長(兼)腎臓病総合医療センター長、泌尿器科部長 山中 正人
腎臓病学
泌尿器科学
日本移植学会認定医
日本泌尿器科学会専門医・指導医
日本透析医学会専門医・指導医
日本腎臓学会専門医・指導医
日本腹膜透析学会認定医

泉 和良

泌尿器科副部長(兼)ロボット手術センター副センター長、高度生殖医療センター副センター長 泉 和良
ロボット手術
泌尿器科一般
男性性機能
日本泌尿器科学会専門医・指導医
日本透析医学会専門医
日本泌尿器学会泌尿器腹腔鏡技術認定医
日本内視鏡外科学会泌尿器腹腔鏡技術認定医
日本泌尿器内視鏡学会泌尿器ロボット支援手術プロクター指導医

辻岡 卓也

泌尿器科副部長(兼)腎臓病総合医療センター副センター長 辻岡 卓也
泌尿器科一般
透析業務
日本泌尿器科学会専門医・指導医
日本透析医学会専門医・指導医
日本泌尿器学会泌尿器腹腔鏡技術認定医
日本内視鏡外科学会泌尿器腹腔鏡技術認定医
日本泌尿器内視鏡学会泌尿器ロボット支援手術プロクター指導医

三宅 毅志

医師 三宅 毅志
泌尿器科 日本泌尿器科学会専門医
日本泌尿器学会泌尿器腹腔鏡技術認定医

尾﨑 悠

医師 尾﨑 悠
泌尿器科一般、ロボット手術 日本泌尿器科学会泌尿器科専門医
日本化学療法学会抗菌化学療法認定医
インフェクションコントロールドクター(ICD)
日本がん治療認定医機構がん治療認定医
Robo-Doc Pilot国内B級認定医
日本泌尿器内視鏡学会泌尿器ロボット支援手術プロクター

多田  航生

医師 多田 航生
泌尿器科一般

堀 克仁

修練医 堀 克仁
泌尿器科分野

川西 泰夫

嘱託医師(兼)ロボット手術センター長 川西 泰夫
男子性機能障害、男性不妊症、ロボット手術 日本泌尿器科学会専門医・指導医
日本泌尿器学会泌尿器腹腔鏡技術認定医
日本内視鏡外科学会技術認定医
日本泌尿器内視鏡学会泌尿器ロボット支援手術プロクター指導医

藤原 敦子

非常勤医師 藤原 敦子
泌尿器科 日本泌尿器科学会専門医
日本透析医学会専門医

学会認定施設

  • 日本泌尿器科学会専門医教育施設
  • 日本腎臓学会専門医制度研修施設
  • 日本透析医学会専門医制度に基づく認定施設

概要

高松赤十字病院泌尿器科では、前立腺がんや腎臓がん、膀胱がんなどの泌尿器科がんの治療、結石治療の他に透析治療、腎臓移植腎疾患の診断治療に対応しております。腎移植は献腎移植や脳死腎移植も施行しております。香川県で最初に導入された手術支援ロボット、ダヴィンチによる内視鏡治療が当院泌尿器科の一番の特色です。新聞や雑誌に手術件数の多い施設としてリストアップされました。現在使用中の機器は最新モデルのダヴィンチXiです。旧来のダヴィンチSiよりもより精細な手術が可能になりました。ダヴィンチの手術はこれまでに1,800例を越え、質の向上も実感しています。また、男性性機能障害の診療、特に若い男性の動脈障害による勃起障害に注力しています。手術療法やカテーテル治療を行っています。尿失禁や臓器脱などの治療の専門外来を設け地域の基幹病院として日々の診療に携わっています。

臨床研究

当院では独自の臨床研究の他、徳島大学の臨床研究に参加しています。

NCD参加について

当科は、一般社団法人National Clinical Database(NCD)が実施するデータベース事業に参加しています。詳しくは、こちらをご覧ください。

詳細情報

~繰り返す膀胱内再発に悩んでいる方はご相談を~
術後膀胱内腫瘍の再発軽減につながる新しい技術診断
膀胱がんの光力学診断(PDD)

当院は2018年、香川県内の病院で初めて膀胱がんの再発率を低減する技術「光線力学診断(PDD)」を導入しました。PDD装置とひとくくりにいっても腫瘍を描出する性能は機種によって全く異なります。PDD装置は数社から発売されておりますが、それらのうち、最も識別能がよいとされているドイツのストルツ社製の装置を導入しています。非常に高価な装置ですが小さな見分けにくい腫瘍を発見しその後の再発率低下に寄与しています。

早期膀胱がんの標準治療は、経尿道的膀胱腫瘍切除術です。開腹するのではなく、尿道から内視鏡を挿入し、電気メスを用いて膀胱内の腫瘍を切除する方法です。この手術の問題点は、術後の膀胱内再発が多いことです。膀胱がんは、もとより多発性、異時性に発生しやすいという特徴があるため、一定の確率で術後に再発をすることはやむをえないことです。しかし、術後に再発する例の中には、初回手術時の微小病変の見落としが原因と考えられるケースも少なくありません。

初回手術時に腫瘍を見つけられない原因は2つあります。1つは腫瘍が肉眼的に判別できないほどに小さい場合、もう1つは上皮内がんの場合です。上皮内がんは通常の腫瘍のように隆起がなく、表面が平坦で、正常粘膜と見分けが付かないことがしばしばあります。

この問題を解決するべく開発されたのが、光力学診断(PDD)です。手術の前に5-アミノレブリン酸という薬を内服し、手術中に専用の内視鏡システム(蛍光膀胱鏡)を用いることで、膀胱腫瘍が赤色に発光して見えます。

このおかげで、従来の方法では見つけられなかった小さな腫瘍や上皮内がんを見つけられるようになりました。

膀胱がんは再発しやすく、身体面のみならず精神的・金銭的にも大きな負担がかかります。また、がんのタイプや進行度合いによっては膀胱を摘出しなければならない場合もあります。「光力学診断(PDD)」は健康保険も適用されており、膀胱がんに悩む患者さんやご家族にとって非常に有益であると期待できる新たな技術です。

小さながんのケース

小さながんのケース

通常のカメラでは判別できない小さながん細胞でも、光力学診断を用いると赤く光って判別できます

上皮内がんのケース

上皮内がんのケース

通常のカメラで見ると、隆起もなく異常がない粘膜のように見えるが、光力学診断では上皮内にあるがん細胞も赤く光って見えます

ダヴィンチ手術 症例数

前立腺がん(平成25年より開始) 1319例
腎臓がん(平成26年より開始) 334例
膀胱がん(平成28年より開始) 159例
骨盤臓器脱(令和1年より開始) 59例
腎盂尿管移行部狭窄症(令和2年より開始) 35例
副腎部分切除 13例
後腹膜リンパ郭清 8例
腎尿管全摘 36例
その他 8例
合計 1971例

2024年09月30日時点

癌の手術治療

高松赤十字病院において県下で最初の手術支援ロボット、ダヴィンチを用いたロボット手術が始まりました。皆さんは“ロボット手術”という言葉からどのような手術をイメージされるでしょうか。工業用ロボットのような装置が自動的に手術をする姿を想像する人がいるかもしれませんが、そうではありません。ロボット手術と言ってもロボットが勝手に手術をするわけではなく、術者がコントローラーを用いて鉗子を操作して行う内視鏡手術です。

すでに泌尿器科の手術の多くが従来の開腹手術から内視鏡手術に代わっています。内視鏡手術は高解像度のモニターに映し出された体腔内の様子をみながら棒状の器具を用いて手術を行います。高松赤十字病院では、これまでに内視鏡を用いた前立腺癌手術が1,262件、膀胱全摘術が144件、腎臓癌手術が302件行われました。前立腺癌手術と膀胱癌手術はその全症例が内視鏡手術で施行されるようになっております。腎臓癌手術は全摘除術だけではなく、小さな癌に対する機能温存部分切除も内視鏡で施行されています。内視鏡手術が低侵襲であること、そのために早期に社会復帰可能であること、合併症の発生率を低減させることだけがその理由ではありません。内視鏡手術は癌治療としての精度が従来の開腹手術よりも優れているからです。そのため、患者さんからも医療者側からも支持されているのです。

この内視鏡手術がさらに発展したものがロボット手術です。実際には、発展したというよりも手術療法が近未来に一足飛びしたような感じすらします。内視鏡を用いて体腔内を観察しながら鉗子を用いて手術が行われる点は同じですが、手術の質は全く別次元といえるほどです。ダヴィンチは4本の腕を持っています。1本はカメラ用で3本は鉗子用です。カメラで映し出される画像は高解像で鮮明ですし、しかも3D画像です。鉗子類はこれまでのような単なる棒状の器具ではなくてアームとよばれる腕に装着される多関節の器具です。この多関節の器具は、これまでの内視鏡手術では不可能であった動きが可能で、回転や屈曲動作は人間の手よりもさらに広範囲の動きが可能です。ロボット手術では従来の内視鏡手術技術をいかに向上させても達成不可能な動作が可能です。さらに、手ぶれ補正機能や動きを繊細にするソフトウェアにより、精度の高い手術が可能です。

ダヴィンチは米国製ですが、日本のロボット技術や多くの国の技術が統合された最先端の医療装置です。そのため、他の医療装置と比べて格別に高額で、医療費の負担額が大きい事が欠点でした。しかし、2012年4月からは泌尿器科の前立腺癌手術に対して保険適用となり前立癌治療に関してはこの問題は解消されました。従来の開腹手術とそれほど変わらない負担でロボット手術を受けることができる我が国の保険制度は本当に優れた制度だと思います。海外では膀胱癌や腎臓癌手術など他の泌尿器科癌や泌尿器良性疾患、呼吸器科、消化器科や婦人科においても利用されています。今後、ロボット手術が活用される領域は広がると期待されています。

高松赤十字病院に香川県で初めて手術支援ロボットが導入されました。しかし、ロボット手術は自動的に手術をする装置ではありません。執刀する医師が技術レベルを向上させてゆくことはもちろん重要ですが、それだけではよいロボット手術は行えません。高松赤十字病院のロボット手術は麻酔科医、ナース、ME、それぞれのプロフェッショナルに支えられています。私たちは力をあわせて、これからも多くの患者さんに、安全で安心な医療を提供していきたいと考えています。

ロボット手術については、こちらにも記載しております。

7cm以下の腎腫瘍に対するロボット腎部分切除術が保険適応になりました

腎臓は尿を作る大切な臓器ですが、他の臓器と同様に、腎臓にも腫瘍ができることがあります。腎臓の腫瘍は早期の段階では無症状ですので、腫瘍が大きくなってしまってから診断がつくことが多く、腫瘍のできている腎臓を1個まるごと摘出する手術が従来の標準的な治療でした。
しかし、最近は健康診断や人間ドックなどによって早期の腫瘍が診断されるケースが増えてきています。小さな腫瘍であれば、肺癌や胃癌のように腫瘍の部分だけを摘出する部分切除術が施行可能です。腎臓は左右あわせて2個ありますが、腫瘍のできている腎臓の全部を摘出して腎臓が1個だけになってしまうと腎機能が低下します。腎機能の低下の程度によっては、将来の腎機能不足につながることがあります。血液透析が必要な程の腎機能不足ではなくても、高血圧症や動脈硬化など血管疾患を引き起こすことがあるので注意が必要です。
最近の腎臓手術は腹腔鏡を用いて行うので、従来の開腹手術に比べて傷が小さく、手術後の痛みが少ないこともメリットです。高松赤十字病院でも2010年から腹腔鏡下腎部分切除術を施行しております。この腹腔鏡手術がさらに進歩したものが内視鏡手術用支援機器、つまりダヴィンチ手術です。内視鏡手術用支援機器、ダヴィンチ手術は2012年に、まず前立腺癌手術に対して保険適応となりました、高松赤十字病院はダヴィンチを香川県で最初に導入し、前立腺癌手術に対してこれまで毎年約100人の方に手術を行ってきました。全員で1,200人ほどの方がこの手術を受けておられます。ダヴィンチ手術はさらに2016年に腎部分切除術にも保険適応となり、高松赤十字病院でも腎部分切除術はダヴィンチに移行しました。
ダヴィンチ手術では三次元の高解像度の画面を見ながら、ロボット支援器具を用いて手術が行われます。これによって従来の腹腔鏡手術では不可能であった操作が可能になりました。また、当院では先進の画像解析システムを用いて腫瘍のある腎臓の3D画像を術前に作成して手術に役立てています。
手術支援ロボットや画像解析システムの進歩により、7㎝以下の腎腫瘍であれば腎臓全部を摘出しなくてもすむ可能性があります。

手術前の画像検査
手術前の画像検査
腎臓の血管と腎臓腫瘍の関係がわかります

手術用の切除シミュレーション画像
手術用の切除シミュレーション画像
手術前には、どの範囲を切除すれば癌が残ることなくきれいな切除ができるかを検討します

手術用のCT検査
手術用のCT検査
右の腎臓に埋もれるように腫瘍ができています

手術用の切除シミュレーション画像
手術後の画像検査
腫瘍とその隣接領域が切除されています

ロボット腎部分切除術[内視鏡手術用支援機器による腹腔鏡下腎悪性腫瘍手術]についてのお問い合わせ

ロボット腎部分切除術[内視鏡手術用支援機器による腹腔鏡下腎悪性腫瘍手術]についてご不明な点などがございましたら、お問い合わせください。

  • 高松赤十字病院 地域連携室 087-831-1170
  • 高松赤十字病院 泌尿器科外来 087-831-7101(内線:2220)

ロボット膀胱全摘・完全体腔内尿路変向術を行っています。

当院では、2016年よりロボット膀胱全摘術、体腔内尿路変向術を行っています。体腔内尿路変向術は、体腔外尿路変向術に比べ、手術時間が短いこと、出血量が少ないこと、傷が小さいことが特徴です。一定の技術と経験を要するため、現状では一部の病院でしか行われていませんが、上記メリットが明らかとなったことで徐々に普及してきています。詳細は以下で改めて記載します。

膀胱がんは、腫瘍の進行度と悪性度の組み合わせにより、標準治療が異なります。進行度が深い場合や、浅くても悪性度が高い場合、また、再発を繰り返す場合には膀胱全摘術が必要となります。
膀胱全摘術には開腹、腹腔鏡、ロボット手術があります。腹腔鏡手術は体の負担の少ない手術法として報告され、当院でも2012年から導入していました。その後、より精密で安全な手術としてロボット手術が開発され、当院では国内での保険適応に先駆けて2016年からロボット手術を開始しています。そして2018年の4月に日本において保険適応手術として承認されました。ロボット膀胱全摘術の特徴は、創が小さく出血が少ない、すなわち体の負担が小さいこと。また、精密な操作が可能であるため、より安全な手術が行える点にあります。当院ではこれまでに、144件のロボット膀胱全摘術を行っています。

続いて、尿路変更の説明に移ります。
膀胱全摘では、尿をためる袋であった膀胱を摘出するため、その代わりとなる構造を再建しなくてはなりません。回腸導管、代用膀胱造設術、尿管皮膚ろうという、3つの方法があります。
尿管皮膚瘻は、尿管を直接腹部の皮膚表面に誘導し、パウチと呼ばれる袋を貼って尿を貯める方法です。
一方、回腸導管、代用膀胱は小腸を利用した再建法です。
回腸導管は、小腸の一部を利用して、これに尿管を吻合し、その小腸の出口部分を腹部の表面に誘導し、袋を装着する方法です。自動的に袋に尿がたまり、尿がたまったらトイレに流します。2-3日ごとに袋を貼り替える必要があります。

代用膀胱は、小腸を袋状に縫い合わせて新膀胱を作成し、これに尿管と尿道を吻合することで、尿道から排尿できる、すなわち自然な排尿ができることが特徴です。腸で膀胱を作る、というと複雑な、難しい手術のように思われるかもしれませんが、そうでもありません。ロボット手術の導入によって、より簡単でかつ、体の負担の少ない手術となりました。当院では代用膀胱造設術を積極的に行っています。

以上の尿路変向術には、体腔外造設術と、体腔内造設術とがあります。
体腔外造設術とは、腹部を切開して小腸を体腔外に誘導した状態で、ロボットを使用せず、開腹手術と同じ要領で尿路変更を行う方法です。体腔内造設術とは、腹部の追加切開をせずに、ロボット手術のまま、体腔内で尿路変更を行う方法です。
上述の通り、体腔内尿路変向術は、体腔外尿路変向術に比べ、手術時間が短いこと、出血量が少ないことわかっています。* 一方で一定の技術と経験を要するため、現状では一部の病院でしか行われていませんが、徐々に普及してきています。当院では、完全体腔内尿路変向術を積極的に行っています。
*Intracorporeal versus extracorporeal urinary diversion following robot-assisted radical cystectomy: a meta-analysis, cumulative analysis, and systematic review J Robot Surg. 2021 Jun;15(3):321-333.

膀胱を全摘して、尿路変更が必要、と聞くと、治療をためらってしまうかたもいらっしゃいます。当然のことです。しかし膀胱がんはやさしいがんではありません。適切な全摘のタイミングを逸することで、代替治療をしている間に進行してしまうケースも往々に経験します。
膀胱全摘手術は上述の通り、従来よりも体の負担が少なく、またより安全に行えるようになりました。全摘手術が必要な場合には、ためらうことなく、速やかに治療に取りかかっていただきたい、と強く願っております。
ご不安がございましたら、いつでもご相談ください。

手術支援ロボット ダヴィンチXi

メンズヘルス外来(月曜日午後、火曜日午後)

毎週月曜日と火曜日の午後が男子性機能に関する外来です。この外来は、男子性機能のうち特に勃起機能に関する問題に対応するためのもので、開設以来40年の歴史がある専門外来です。基本的な検査は超音波検査です。この検査は、外来で実施できる簡単で非侵襲的な検査です。

性機能外来を受診する患者さんの20%は心因性ですが、残りの80%の患者さんには何らかの異常が認められます。最も多いのは血行障害によるものです。また、膀胱や前立腺、直腸の手術後の神経障害の患者さんも少なくありません。

高松赤十字病院では特に若い男性の勃起障害に留意しています。若い男性の勃起障害の多くは単純な動脈障害ですが、患者さんにとっては青春時代や結婚に影響を与える生涯を左右するほどの超重大問題です。動脈性勃起障害であれば動脈バイパス手術によって完治することも夢ではありません。

中高年者の性機能障害に対しては薬物療法が主体です。バイアグラから始まったフォスフォジエステラーゼ阻害剤による勃起障害の治療はシアリス、レビトラと発展し安全な治療となっています。硝酸製剤との併用による事故はもはや報告が皆無といえるほどです。しかし、中高年者の勃起障害発症は心血管疾患の重要なマーカーです。勃起障害発症から冠動脈疾患発症までの期間は約3年といわれています。このように中高年者の勃起障害発症は冠動脈疾患との密接な関連がありますので、当院では処方に際しては循環器科において適切な負荷試験を行い、虚血性心疾患を除外診断しています。面倒だとお考えになる患者様もおられますが安全な処方のためとご理解を頂いています。

若い人の外傷性動脈性勃起障害は本当に重大な問題です。しかし、手術やカテーテルによる血管拡張で治療可能です。残念ながら全員の方が治癒するレベルには至っていませんが、ほとんどの人はなんとかなるレベル以上に復帰できます。

若い人の外傷性動脈性勃起障害に対する二つの治療のうち、手術について述べます。これまでに170人以上の人が当院でこの治療をうけています。とは言っても、この年間に10件程度です。件数は多くありませんが大変に重要な手術であると考えています。高松赤十字病院では最新の高精細手術用顕微鏡が整備されておりますし、泌尿器科医のうち2名がマイクロサージェリー学会の会員です。年間10件程度の手術のうち8割は県外からの紹介患者です。北海道や東北地方、関東や九州など遠方からの患者さんもいます。若い人の勃起障害がいかに大変なことかはこのことからも想像いただけると思います。手術のためには1週間程度の入院が必要です。手術の効果は感動的なものです。動脈損傷の程度や受傷からの期間、それによる海綿体障害の程度によって復活までの期間は異なりますが、血行が改善すればやがて勃起機能は復活します。数ヶ月で回復する人もありますし、数年かかって徐々に回復し正常化する人もあります。血管吻合部が閉塞しないようにすることが大切です。血行再建に関しては入院費用の含めてすべて保険適応です。

若い人の外傷性動脈性勃起障害に対する二つの治療のうち、二番目の治療について述べます。これは血管カテーテルを用いて閉塞した動脈を広げる方法です。心臓の血管で行われているカテーテル治療(PTA)を末梢動脈に対して行うものです。最近では直径が0.8ミリ未満のバルンカテーテルが開発されており、外傷性内陰部動脈閉塞症の患者さんのうち程度が軽い人は血行再建手術ではなく、PTAだけで治療が可能です。これまでに40人ほどの方がこの治療を受けておられます。カテーテル治療ですから完全閉塞の人には無理ですが、ある程度の開存があればPTAが可能です。PTAは泌尿器科医ではなく、手技に習熟した放射線科医が担当いたします。

若い人は薬物療法でお茶を濁すのではなく、完治する可能性があることをどうか思い出してください。

正常な内陰部動脈
正常な内陰部動脈

外傷により狭窄を生じた内陰部動脈
外傷により狭窄を生じた内陰部動脈

3DCTA

Methods

PTA前

PTA後

治療の方法が進歩し、現在ではどのような勃起障害でも「何とかなる」というレベルに達しています。勃起機能障害は健康に関する重要な問題です。月曜日の午後の専門外来を受診してください。
かつては勃起障害の診療は保険適応外でしたが、厚生労働省は勃起障害を疾病として扱うことを承認し、薬物療法に関する費用はまだ自己負担ですが、いくつかの検査や治療が保険適応となっています。

若年者の動脈性勃起障害に対する血管吻合手術累積有効率と手術結果に影響を与える要因について[PDF:364KB]

男性更年期障害

女性の更年期障害と同じように男性ホルモンが低下したことによってさまざまな症状が出現する病気があります。LOH症候群と言います。男性ホルモン値を測定し、低下が明らかであれば補充療法を行います。男性ホルモンの補充療法は明快な効果を有すると同時に肝機能障害や多血症などの有害事象もありますので定期的な検査を行いながら施行します。保険診療です。

その他

性同一性障害の方のうち、他施設での倫理委員会で承認を受けている方に対しては男性ホルモンの補充療法を行っています。この場合には是非、紹介状をお持ちください。性腺の状況、戸籍の状況により保険適応の可否が異なります。

尿路結石症に対する治療:X線被曝がゼロの治療方法で行っています。

「尿路結石」は腎臓・尿管・膀胱・尿道などにある結石のことをいいます。尿路結石は、結石はその位置に応じて、腎結石、尿管結石、膀胱結石などと呼ばれます。しばしば腰周辺やわき腹、背中側あたりに激痛の発作を伴います。日本人の尿路結石は食生活や生活様式の変化とともに増えており、全国調査によると40年間で約3倍も増加しています。男性では7 人に1 人が、女性では15 人に1 人が一生に一度は尿路結石に罹患すると言われています。また、尿管結石は再発が多いことで知られています。

尿路結石は、結石が小さい場合は尿路を通って、自然に体外に排出される場合があります。自然排石が期待できない大きな結石や、小さな尿管結石でも1ヶ月を超えて自然排石されない場合、薬剤で疼痛管理が出来ない場合においては、外科的治療が必要となります。尿路結石を放置すると尿路感染症や腎機能低下につながります。

尿管結石に対する主な外科治療として、体外衝撃波結石破砕術(extracorporeal shock wave lithotripsy:ESWL)、経尿道的結石破砕術(transurethral lithotripsy:TUL)、経皮的結石破砕術(percutaneous nephro-uretero lithotripsy:PNL)の三つが挙げられます。

なかでもTULは、尿管鏡の開発と砕石効率が高いレーザー破砕装置の開発により、急速な進歩を遂げており、安全性は高く治療効果の高い手術です。ヨーロッパ泌尿器科学会がまとめたデータでは、ESWL と比較して高い排石率を示しています。TULは短期間の入院で、麻酔下に行います。尿道から尿管鏡を挿入して、結石をモニターで確認しながら、レーザー装置にて砕石を行います。一般的に、TULは手術中に放射線透視を用いて行われます。しかしながら、当院では超音波装置を用いて行っており、手術中の放射線被曝を避けて手術を受けていただくことができます。通常行われている放射線被曝を伴う治療方法では結石の部位によっては精巣や卵巣の被曝が生じます。被曝量は多いものではありませんが、結石は繰り返すことの多い病気ですし、若い人もいます。被曝ゼロで行う方法がすでに300人以上の患者さんに行われています。安全で良好な治療結果がでています。

尿路結石症に対する治療の第1選択は体外衝撃波砕石術(ESWL)です。ESWLは結石自体を直接的に取り出すわけではなくて粉砕することによって自然に排出されることを待つ治療です。ESWLは原則として、無麻酔で、外来(日帰り手術)で治療しています。新機種を導入し、患者さんにとって、苦痛の少ない、効率の良い治療ができています。結石の成分や部位、腎機能の状況によっては砕石困難な場合があります。

砕石困難な場合や腎機能の状況が不良である場合には内視鏡を用いて結石をレーザーで粉砕する方法が有効です。この場合には入院が必要です。麻酔をして尿道から胃カメラを細くしたような尿管鏡という内視鏡を尿管内にいれて、結石をモニターで観察しながらレーザーで砕石し、砕石片を回収します。

ロボットで腹腔鏡下仙骨腟固定術を行っています

膀胱・子宮・直腸・腟などが腟口から脱出する状態を骨盤臓器脱と呼びます。女性の骨盤底の緩みが背景にあり、出産・加齢などにより骨盤底の筋肉(骨盤底筋)が弱くなり、支持組織が損傷されることが原因と考えられています。

当院では2017年6月より、骨盤臓器脱に対する腹腔鏡下手術(腹腔鏡下仙骨腟固定術)を行っています。この手術は骨盤臓器脱に対する最新の治療法で、身体への負担が小さくて傷あとも目立ちにくく、そして従来の経腟メッシュ術による治療より効果が高いと言われています。手術と同時に子宮を摘出する施設もありますが、当院では、原則子宮を温存しています。実際にこの手術を受けた患者さんの満足度はとても高く、これからは旅行に行きたいなどといった喜びの声が多く届いています。

2020年4月からは手術支援ロボット、ダヴィンチを用いたロボット手術(ロボット支援腹腔鏡下仙骨膣固定術)が健康保険の適応となり、当院でも開始ました。従来の腹腔鏡手術に比べて、正確で精密な手術が可能となりました。また手術時間も短くなり、さらに身体への負担も軽くなることが期待できます。
骨盤臓器脱は中高年の女性を中心に多くみられる症状です。米国では女性が80歳まで生きると、約1割がこの種の状況で手術を受けると報告されているほど頻度の高い疾患です。ひとりで悩みを抱えず、ぜひお気軽にご相談ください。

泌尿器外来のお問い合わせ
17時まで
087-831-7101内線(2220)

男性不妊症外来

夫婦ともに正常な妊娠機能を有しておれば、1年後の妊娠率はおよそ85%です。しかし、夫婦のどちらか一方が不妊の原因を持っていると妊娠は起こりません。WHOの統計によれば、男性側だけに原因がある場合は24%、男女ともに原因がある場合が24%とされており、男性側因子はおよそ半数です。以前は女性が婦人科を受診し、その後に男性が泌尿器科に紹介されることが多かったのですが、最近は男性が先に受診することも珍しくはありません。検査や診察は男性の場合の方が簡単ですし、女性よりも妊娠について知識が乏しい場合がありますからまず男性が受診する方がよいように思われます。通常は、1回目の受診日には精巣と前立腺の診察、超音波検査、内分泌検査、精液検査を行います。2回目に再度、精液検査を行い、治療方針を決定します。

保険診療ですが、治療薬の一部は自己負担です

検査

  • 精液検査
  • 触診
  • 内分泌検査、染色体検査(血液検査)
  • 超音波検査(エコー)

精液検査は信頼性の低い検査でしたが、WHOが中心となって国際標準化精液検査法が確立されています。ただし、これには人手や装置、時間がかかります。精液検査に対する保険点数は妥当と思えませんが、簡便な検査や外注検査では患者さんを迷わせることになります。高松赤十字病院では標準化精液検査を行っておりますので、精液検査だけでも結構ですので依頼ください。

男性不妊症の原因と治療

  • 性路(精管、射精管)の閉塞:小児期の鼠径ヘルニア術後。避妊手術。性感染症。射精管嚢胞など。
    → 顕微鏡下精管吻合術。内視鏡による精液流出路の切開術。MD-TESE。
  • 精索静脈瘤:精巣静脈の逆流による造精機能障害。
    → 顕微鏡下根治術
  • 染色体異常:クラインフェルター症候群など。
    → MD-TESE
  • 内分泌(ホルモン)異常、原因不明:
    → ホルモン療法、漢方薬、酵素剤、ビタミン製剤
    人工授精(高度生殖医療センター記事参照。こちらをクリック)、MD-TESE(無精子症)

当院では無精子症の場合、MD-TESE(顕微鏡下精巣内精子採取術)を行っています。
TESEには肉眼的に組織を採取する従来のTESEと、顕微鏡下に組織を採取するMD-TESEという方法があります。

従来のTESEでは、肉眼的に見える範囲で、組織を大きな塊で採取していたのに対し、MD-TESEでは20倍の拡大視野で、精密、選択的に組織を採取できます。余計な部分を取らなくてすむため、MD-TESEの方が精子の回収率が高く、また精巣へのダメージが少ないことが報告されています。
2~3日の入院でこの治療を行っています。

当院では院内で泌尿器科と産婦人科が連携しており、患者さんが泌尿器科と婦人科の別々の病院を行き来することなく、スムーズにMD-TESE、体外受精の計画を進めていくことができるように尽力しています。

最新式の手術用顕微鏡
最新式の手術用顕微鏡

手術実績

疾患名 手術術式 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年 2022年 2023年
副腎、腎の疾患 腹腔鏡下副腎摘除術 4 3 4 4 3 1 6 3 2 2
腹腔鏡腎部分切除術
(2015年からダヴィンチ)
5 17 21 31 29 30 44 35 29 47
腹腔鏡下単純腎摘除術 3 0 0 2 5 2 4 1 0 0
腹腔鏡下根治的腎摘除術
(2022年からダヴィンチ)
14 14 13 8 13 1 6 8 14 14
腹腔鏡下腎尿管全摘・
膀胱部分切除術
(2022年からダヴィンチ)
15 13 13 10 15 12 19 9 17 8
腹腔鏡下腎盂形成術
(2020年からダヴィンチ)
3 5 7 3 6 7 7 5 11 9
開腹腎部分切除術 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
開腹根治的腎摘除術 3 2 1 1 1 1 1 0 0 0
開腹腎尿管全摘・
膀胱部分切除術
1 2 1 2 0 0 0 0 0 0
尿管、膀胱の疾患 体外衝撃波砕石術 61 43 43 0 0 0 0 0
経尿道的膀胱砕石術 9 10 9 9 9 8 15 15 10 11
経尿道的尿管砕石術 45 82 81 81 135 111 105 101 105 81
腹腔鏡膀胱全摘除術
(2016年からダヴィンチ)
10 7 10 15 13 18 18 15 30 20
開腹膀胱全摘除術 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0
(新膀胱造設術) 4 2 2 7 7 12 9 10 26 5
(回腸導管造設術) 4 1 1 6 6 4 4 2 4 8
(尿管皮膚瘻造設術) 1 1 1 2 1 1 5 6 0 5
経尿道的膀胱腫瘍切除術 72 85 92 101 107 130 117 119 107 125
(PDD併用) 27 110 96 89 78 83
前立腺の疾患 前立腺生検術 250 289 223 208 216 220 228 231 232 204
ダヴィンチ前立腺全摘除術 105 122 96 106 135 128 108 104 129 163
鏡視下前立腺全摘除術 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
経尿道的前立腺切除術 18 25 7 12 30 37 39 47 29 25
その他の疾患 精巣摘出術 4 5 8 4 3 1 6 2 5 3
精巣固定術
(精巣捻転に対する)
3 1 1 3 3 7 5 5 6 10
精索静脈瘤手術 3 4 4 2 3 5 0 6 9 11
尿失禁手術(TVT) 2 11 18 5 0 0 0 0 0 0
腹腔鏡下臓器脱手術(LSC)
(2020年からダヴィンチ)
6 14 12 8 12 17 14
経尿道的内尿道切開術 7 13 2 8 7 9 10 11 11 7
陰嚢水腫手術 3 9 3 2 5 6 6 3 6 7
勃起障害に対する
動脈血行再建術
13 5 6 7 3 3 4 0 4 11
勃起障害に対するPTA
(2017年から)
0 0 0 10 10 3 8 6 8 29
尿膜管摘出術
(2016からは腹腔鏡)
0 1 6 2 4 3 1 1 2 7

地域の先生方へ

高松赤十字病院では地域の患者さまに安全で安心な医療を提供することを理念としております。おかげさまでダヴィンチ症例は1,800件をこえました。これからも根治性が高く、低侵襲で、可能な限りの機能温存をめざしますのでよろしくお願いいたします。あまり認識されていないことですが結石治療は他施設ではX線イメージ装置を使用して行っております。しかし、私たちは2018年から超音波ガイド下におこなっております。X線被曝はゼロですので若い女性でも安心して治療を受けていただけます。若い男性の動脈障害による勃起障害は手術による治癒を目指しています。最近はPTAも可能になりました。腎臓病についても早くから取り組んで参りました。対象患者さまが増加してまいりましたので、透析医療や腎臓移植の部門を泌尿器科から独立させて腎不全外科としてスタートしました。メンバーはこれまでどおり泌尿器科医と密に連携して診療にあたりますのでご安心ください。
セカンドオピニオンや手術のご相談、術後の治療と観察など病病連携、病診連携を大切にしてゆきたいと考えております。一般泌尿器科疾患につきましても腎臓疾患につきましても、直接に泌尿器科へまたは地域医療室を通じてご相談ください。