日本赤十字社 高松赤十字病院

臨床遺伝診療科

スタッフ紹介

スタッフ名 専門分野 認定医・専門医等

隈元 謙介

臨床遺伝診療科 非常勤医師 隈元 謙介
遺伝性腫瘍、消化器外科 日本人類遺伝学会 臨床遺伝専門医
日本遺伝性腫瘍学会 理事、遺伝性腫瘍専門医
日本外科学会 専門医
日本消化器外科学会 専門医
日本大腸肛門病学会 評議員、専門医

西内 崇将

臨床遺伝診療科 医師 西内 崇将
腫瘍内科 日本内科学会認定内科医・総合内科専門医・指導医
日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医・指導医
日本血液学会血液専門医・指導医
日本東洋医学会漢方専門医・指導医
日本がん治療認定医機構がん治療認定医
日本化学療法学会抗菌化学療法認定医
日本臨床検査医学会臨床検査管理医

当科の概要について

遺伝情報は我々の身体を構成する約37兆個の細胞すべてにDNAとして刻まれ、生涯変わることはありません。DNAはわずか4つの塩基(A,T,G,C)が30億個並んでいて、所々の遺伝子の塩基配列の違いが遺伝子多型といわれて、個人間の外見や体質の違いに関与しているだけでなく、病気のかかりやすさや薬の効果・副作用にも関与しています。
近年の急速な遺伝子解析技術の発展により、がんをはじめ様々な病気の診断・治療に続々と遺伝子検査が導入されています。特に、がん治療においては、保険診療によるコンパニオン診断(※1)としてのがん遺伝子検査やがんゲノムプロファイル検査(※2)の普及に伴い、ゲノム情報に基づくがん薬物療法が急速に普及しています。その中には、遺伝性腫瘍(※3)に関連した遺伝子の検査(例えば遺伝性乳癌卵巣癌に対するBRCA1/2 遺伝学的検査や、リンチ症候群に対するマイクロサテライト不安定性(MSI)検査など)が含まれ、血縁者に引き継がれる可能性のある遺伝子の病的バリアントの検出が対象となっている検査もあります。
近年、これらの検査によって病的バリアント(※4)が判明した場合、発端者(病的バリアントが判明した本人)とその血縁者が、遺伝性腫瘍に関連した遺伝子の保持者として疑われる例(二次的所見)が増えてきています。さらに、先天性疾患や指定難病に対する遺伝学的検査とサーベイランス(※5)のニーズも同時に高まっています。
これらの遺伝学的検査は、患者本人の診断や治療だけでなく、未発症の血縁者にも影響があり、遺伝学的検査の実施及び結果開示や、サーベイランス方法を統括する部門が必要であるため、当科(臨床遺伝診療科)が開設されました。
今後は一層、遺伝医療やゲノム医療が発展して、様々な病気の診断や治療に遺伝子解析が実施され個別化医療の新たなステージになっていくものと考えています。

(※1)特定の治療薬の効果があるかどうかを、治療前にあらかじめ調べる検査。
(※2)がんの発生に関わる多数(100種類以上)の「がん関連遺伝子」に遺伝子異常があるかどうかを一度に調べる検査のこと。
(※3)遺伝的要因がより強く影響しているがんのこと。がんの種類によるが、がん患者さんの約1割は遺伝性腫瘍(遺伝性のがん)といわれている。遺伝学的検査により診断が確定される。
(※4)遺伝子配列のうち、個々人間の配列の違いをバリアントと言い、病的バリアントとは、病気の発症原因となるバリアントのこと。
(※5)遺伝学的検査で病的バリアントが判明し、遺伝性疾患の発症リスクが高いと推定された方に対して、きめ細かく計画的に、病気の早期発見を目的として継続的に提供される検査のこと。

受診対象者と主な対象疾患について

受診対象者:

  1. 保険診療で実施している遺伝学的検査で病的バリアントを認めた方
  2. 遺伝学的検査で病的バリアントを認めた方の血縁者
  3. がんゲノムプロファイル検査や、がんに関連する遺伝子検査により二次的所見を指摘された方とその血縁者

    →がん遺伝子パネル検査により、生まれつきがんになりやすい体質であった可能性が疑われることがあります。このような場合、カウンセリングも積極的に行います。必要があれば、確認するための検査を施行します。

  4. その他:主な対象疾患に該当するか不明であり、下記のような遺伝や遺伝性疾患に関わるいろいろな悩みや不安を抱いている方
    • 自分ががんになり家系的にもがんが多いが、遺伝するものなのか?
    • 家族が遺伝病だと言われているが、自分も同じ病気にかかるのだろうか?
    • 自分の病気が子供に遺伝しないか心配である。
    • 主治医に遺伝子検査を受けるように勧められたが、受けるべきか悩んでいる。
    • 先天異常、染色体異常、出生前診断などについて説明を受けたが、どうしたらよいのかわからない。
    • 子供が遺伝病と言われたが、どうなっていくのか不安である。治療法があるのか聞きたい。

      など

主な対象疾患:

遺伝性腫瘍:遺伝性乳がん卵巣がん、リンチ症候群、家族性大腸腺腫症、リ・フラウメニ症候群、多発性内分泌腫瘍症、神経線維腫症など
本人や血縁者に以下の特徴が一つでも当てはまる場合は、遺伝性腫瘍について検討が必要です。ただし、これらの特徴がみられない場合もあります。

  • 比較的若い年齢でがんを経験、ひとりで複数のがんを経験
  • 2つある臓器の両方にがんを発症
  • 家系内に特定のがんを発症した人が複数いる
  • 遺伝性腫瘍に特徴的ながんの発症

→当院で実施可能な遺伝性腫瘍に関する遺伝学的検査:シングルサイト(1サイト)、シングルサイト(2サイト)、ACTRisk[67]、ACTRisk Care[31]

先天性疾患・遺伝性疾患:染色体疾患(ダウン症候群、13トリソミー、18トリソミー、ターナー症候群など)、染色体微細欠失・重複症候群(22q11.2欠失症候群、ソトス症候群、プラダーウィリー症候群など)、単一遺伝子疾患(マルファン症候群、ヌーナン症候群、骨系統疾患など)、先天性代謝性疾患(ファブリー病、ゴーシェ病、フェニルケトン尿症など)、循環器疾患(遺伝性不整脈疾患、心筋症、家族性高コレステロール血症など)、神経筋疾患(結節性硬化症、筋強直性ジストロフィー、脊髄小脳変性症など)、耳鼻科疾患(先天性難聴など)
→これらの遺伝学的検査は香川大学医学部附属病院に紹介し実施することがあります。詳細は担当医とご相談の上で説明いたします。

上記に該当する場合は、血液検体による遺伝学的確認検査を実施することがあります。ただし、遺伝子や染色体が関係して生まれながら症状を呈する病気の可能性もあり、適切な診断とその後の対応が必要になります。また、このような遺伝情報は個人情報でもあり、遺伝子検査の前後には必ず遺伝カウンセリングを受けていただき、ご本人の病気への十分な理解はもちろんのこと血縁者にも影響する可能性があることもご理解頂いた上で実施致します。

遺伝カウンセリング(遺伝相談)について

遺伝について不安や悩みを抱えている方ならどなたでも対象になります。遺伝に関する詳細な情報を提供して、遺伝性疾患の可能性や遺伝子検査を受ける必要性など十分な理解を得られたうえで、個人の意思を尊重し、様々な選択や決定を支援いたします。また、患者さんやご家族の不安を和らげられますように時間をかけて実施いたします。

外来診療日

毎月 第2・第4 火曜日、 午後2時~5時

費用について

・原則として自費診療(保険外診療)になります。遺伝カウンセリングの費用は、
初回 1時間あたり 5,500円、30分延長毎に2,750円追加
2回目以降 1時間あたり 3,300円、30分延長毎に1,650円追加
・遺伝学的検査料等は、別途実費負担となります。
例1:シングルサイト検査 約3.5~7万円 対象とする1種類の遺伝子を解析
例2:多遺伝子パネル検査 約20~25万円 30~70種類の対象遺伝子を同時に解析
なお、一部の検査や検査の前後に行う遺伝カウンセリング等が保険診療として対応できる場合がありますので、詳細はがん相談支援センター又は、当科担当医にお問い合わせください。

予約受付/問合せ先

予約制になります。
高松赤十字病院 がん相談支援センター

受付時間:平日 8:40 ~ 17:20

地域の先生方へ

遺伝子や染色体が関係する病気の診断と遺伝性疾患の最新情報を提供すると共に、近年重要性を増している臨床遺伝学的診療を診療科横断的に社会・心理的なサポートとともに努めて参ります。お悩みの方、疾患が疑われる方、二次的所見を指摘された方など積極的にご紹介ください。