さぬきの健康と元気をサポートする高松日赤だより

なんがでっきょんな

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新院長 中山正吾のご紹介

2023年から第三心臓血管外科部長を務め、今春、新院長に就任。
これまでのキャリアや思い出を振り返りつつ、院長として目指す高松赤十字病院の姿を語ります。

当院の心臓血管外科開設がキャリアの転機に


生まれは大阪、漫画『じゃりン子チエ』の世界そのもののザ・下町育ちです。父が開業医で、実家は自宅兼診療所。物心ついた時から医療が身近にあるのが当たり前の毎日でした。父の跡を継ぐことを意識していたわけではありませんが、読書が大好きで野口英世やシュヴァイツァーの伝記などを読みふけった影響が大きく、自然と「いずれは医者になるんだ」と考えていたように思います。

大阪大出身の内科医だった父に反発して、京都大に進学。初期研修制度などはない時代だったので、卒業と同時に専門を決める必要がありました。外科分野で当時人気が高かったのは消化器外科ですが、人があまりやっていないことをしたかった私の選択肢は、脳神経外科か心臓血管外科の二択。どちらも厳しい症例の多い分野ですが、心臓血管外科を選んだのは「元気に退院していく患者さんを少しでも多く見守りたい」と思ったからです。

私にとっての転機は、2002年に高松赤十字病院へ来たことです。心臓血管外科の新設に当たり、初代部長として着任しました。主に関西圏の医療機関に勤め、四国にも院内にもまったくゆかりのない人間が、新しい科の立ち上げ当初から責任ある立場を務めることになったわけです。それまで8年ほどを過ごした大阪赤十字病院でも、さまざまな症例に触れ知見を深めながらもトップを務めることはありませんでしたから、部長職は私にとっても初めてのこと。心臓血管外科は患者さんにとって最後の治療の砦ともいえるため、「手術を成功させなければいけない」という気負いもあり、正直ハードルの高い仕事になると思っていました。でも、循環器内科をはじめとする他科や多くの病院スタッフに支えられる中で、「ひとりで頑張らなくていいんだ」と気づいたんです。きちんとコミュニケーションをとって信頼関係を深めていけば、心強い協力体制が育まれると学べたのは、大きな糧になりました。

当院で過ごした5年間で身につけた度胸とコミュニケーション力は、その後大阪赤十字病院に戻ってからも大いに役立ちました。2020年、コロナ禍で医療現場が混乱する中、救急医が足りなくなり、当時副院長を務めていた私も感染防護服を着て現場に立つことに。救急は心臓血管外科以外の患者さんも当然来られます。初めて診る症例に対応しつつ研修医も指導して…と目まぐるしい中でも、救急隊員や医師・看護師とコミュニケーションをしっかりとって現場を回すのが私の役目。まさか定年退職を2年後に控える身で、専門外の分野で新しいことを学ぶとは思いませんでしたが、高松での経験が活きた思い出です。

みんなが対等な立場で幸せを追求しよう

2023年4月から高松赤十字病院で第三心臓血管外科部長を務め、今春、院長に就任しました。約20年前の当院と比べて驚いたのは、組織の枠を超えたチーム医療がかなり進んでいることと、研修医などの教育制度が充実していること。私も前院長の西村先生が目指した「人」を大切に育てる方針を踏襲し、医療従事者一人一人が「ハードなこともあるけれど、仕事が楽しい」と思える環境をつくりたいですね。

また、当院はロボット手術に代表される難易度の高い治療や血管内治療、高精度なPET-CT検査、放射線治療などを提供する高度急性期病院であり、「短期間の入院で重症患者さんに専門的な治療を行う」役割を持つ医療機関です。患者さんが回復するまでの長い治療スパンを支えるには、地域のかかりつけ医をはじめとする他医療機関との協力体制が欠かせません。

いずれの場合も、大切なのはやはりコミュニケーションと連携です。私が目指すのは、「患者さん・医療従事者・院内スタッフ・地域の各医療機関」が対等な立場でそれぞれの役割を担う大きな一つの輪となって、「みんなの幸せ」を実現していく医療の在り方です。職場改善もそのために必要な取り組みの一つで、医療従事者が安定したキャリアを築ける環境が、ひいては患者さんや地域の幸せにつながるはず。患者さんもこの「輪の一員」として、治療方針をはじめとするさまざまな決断を、私たちと一緒に考えていただきたいと思っています。

私が医師としてずっと大切にしているのは「思いやり」です。相手の立場に立ち、相手の気持ちや苦しさを慮るのは、医療の基本とも言えるでしょう。患者さんを含め医療にかかわるいろんな人たちが、コミュニケーションを通じて互いの立場を考え、つながり合い、地域一丸で「幸せ」を追求できる関係が築けたら、とてもうれしく思います。


当院が目指す医療の在り方

「輪」の一員として、当院のさまざまな専門職種が連携し、患者さんや地域とともに「みんなの幸せ」を追求します。

 

 


中山 正吾(なかやましょうご)
 日本胸部外科学会認定医・指導医
 日本外科学会外科専門医
 三学会構成心臓血管外科専門医認定機構
 心臓血管外科専門医・修練指導者
 日本心臓病学会 心臓病上級臨床医(FJCC)


長時間に及ぶこともある心臓手術を支える体力と根気は、毎日40分~1時間のランニングで養う。子どもの頃から変わらず読書好きで、最近読んだ本の中で面白かったのは中国のSF小説『三体』。


表紙

なんがでっきょんな

vol.68

最新号

「高松日赤だより なんがでっきょんな」は、患者の皆さんに高松赤十字病院のことを知っていただくために、季刊発行する広報誌です。季節に合わせた特集や役立つ情報を掲載いたします。冊子版は、高松赤十字病院の本館1階の③番窓口前に設置していますので、ご自由にお持ち帰りください。左記画像をクリックすると、PDFでご覧になることもできます。

Take Free!

Columnvol.68の表紙のひと

診療放射線技師

当院が誇る高精度のPET-CT室にて撮影を行いました。撮影中の雰囲気は非常に良く、仲の良さが素敵な笑顔から伝わってくると思います。若手ながら高度な検査や治療を担当する優秀な5人。真面目で仕事熱心、そして常に知識・技術の向上に励んでいると上司からの評価も非常に高く、お互いに切磋琢磨しながら頑張っている彼らです。