世界では次々と新しい薬が開発され、医療に役立てられています。今回はそんな薬の中でも、使われているうちに新しい効果が発見され、3つの全く異なる病気に使われるようになったお薬「SGLT2(エス・ジー・エル・ティー・ツー)阻害薬」についてお話します。
SGLT2阻害薬って?
「SGLT2」は、腎臓の尿細管に存在しています。尿中の糖を身体に戻す働きがあり、人体にとって重要な栄養素である糖分のロスを防いでいます。
この「SGLT2」の働きを阻害することで、尿中へ糖を排出して、血糖値を下げる薬が「SGLT2阻害薬」です。
糖尿病治療薬として6種類のSGLT2阻害薬が2014年から日本でも使用され始めました。
糖尿病以外にどんな病気に効果があるの?
糖尿病の治療薬として広く世界で使われるようになり、SGLT2阻害薬を飲んでいる患者さんのデータがたくさん収集されました。そのデータを解析したところ、糖尿病になっているかどうかに関わらず、心不全や腎不全にも効果があることが分かりました。そして心不全、腎不全の治療薬として承認を受け、糖尿病の患者さんだけでなく、心不全や腎不全の患者さんにも使われるようになりました。
(2024年現在、心不全と腎不全両方に使用できるのはフォシーガ®、ジャディアンス®のみ)。
なんで糖尿病の薬が心不全や腎不全に効くの?
実は、心不全や腎不全に効く理由は、全てが解明されているわけではなく、現在も研究されています。尿量を増やすことや、心筋の収縮力の改善、心臓を休ませること等が心不全に効くメカニズムとして考えられています。また、腎臓の中の糸球体に負担がかかるのを抑えることが腎不全に効くメカニズムと考えられています。
今まで心不全や腎不全に使われていた薬とは作用メカニズムが違うため、これまでの治療薬と併用することで効果が期待できます。