泌尿器科
香川県の医療機関で初めてロボット手術を導入したのは、当院の泌尿器科です。以来10年間で1700件を超える手術を行い、中四国でトップレベルの実績を確立。今やロボット手術は外科手術と同じように「当たり前」の選択肢になりました。特に前立腺がんや膀胱がんは、ダヴィンチ手術で「治る」病気になりつつあります。腎臓がんについても、患者さんに負担の大きい全摘出を避けてロボットで対応することが増えました。前立腺がんの場合は手術後の尿漏れなどのストレスも解消・軽減し、臓器の機能や生活の質が元通りに近い状態に戻れることも多く、泌尿器科はロボット手術の登場で大きく進歩した診療科の一つと言えるでしょう。
今後の課題は、手術クオリティの維持・向上と、腎移植をはじめとする先進的な治療への拡大です。既に県外ではロボット手術で移植を行った事例もあり、そうした先行事例に学びながら、今まで以上に患者さんによりよい治療を提供できる環境を整えていく必要があります。
呼吸器外科
当院の呼吸器外科におけるロボット手術例は、現在8割以上が肺がんの患者さんです。胸腔鏡手術の対象疾患はロボット手術の対象にもなり、細かい血管や神経が鮮明に見えて関節の動きの自由度も高い分、ロボットの方が手術精度は高くなります。ロボット手術には胸腔鏡と同様に保険が適用される点も、患者さんにとって大きいメリットです。
一般的に「ロボット手術の方が痛みが少ない」と言われますが、感覚に個人差があるのも事実。肋骨の間から器具を挿入する際、ロボットは位置を固定して行うため、肋間神経痛などのリスクが低い傾向にはあります。
当院では今のところ月平均1件ペースで実績を重ね、担当医師は他科・他院のロボット手術例なども積極的に学びながら、シミュレーターを使って技術の維持・向上に努めています。全国的に見ても2割程度がロボット手術になり、機械の進歩とともに治療法もどんどん更新されてきました。当院でも常に情報を収集し、最先端の治療を患者さんに届けるべく、研鑽を重ねています。ロボット手術が行える人材のさらなる育成が、今後の課題です。
消化器外科
当院では2017年に胃がん、18年に直腸がんのロボット手術がスタートし、23年から結腸がんにも領域を拡大しました。これまで培った腹腔鏡手術の豊富な実績をベースに、ロボットによるさらに精度の高い手術を行えるのが強み。侵襲性の低さとともに、肉眼でも見えないようなレベルの血管まで3Dで立体的に把握して丁寧に手術ができるため、特に細かい動きが必要な骨盤内臓器で威力を発揮します。
現在、ロボット手術を行える医師は3人。胃がん・直腸がんのロボット手術については一定の基準を満たして指導的立場を務めることができる「プロクター」の資格も持ち、正しい指導下で後進を育成できる環境が整っています。手術後はビデオをもとに必ずカンファレンスを行い、研鑽を欠かしません。
結腸がんへの適用拡大と、他科でも実績が増えてきたことから、今の課題の一つはロボット手術設備の効率的な運用を実現するための「手術時間の短縮」。ロボット手術のメリットをより多くの患者さんに感じていただけるよう、環境改善に努めていきます。
産婦人科
当院の産婦人科で行っているロボット手術の対象は、現在のところすべて子宮の良性腫瘍に関する全摘術。狭い場所ほど精密さを発揮するロボット手術ならではの強みを生かし、特に小骨盤腔に収まるサイズの子宮の手術を得意としています。癒着のない症例のみならず、近年は癒着症例への対応力も向上してきました。
子宮頸部の異形成(子宮頸部上皮内腫瘍)については、閉経を迎え妊娠出産の可能性がない人に対しては、子宮頸部円錐切除術よりも子宮そのものを摘出する方がメリットが大きく、ロボット手術で安全な子宮全摘術を推奨することも増えています。低侵襲で行えるため、開腹による全摘術に比べると入院日数や退院してから日常生活に戻るまでの日数もはるかに短くなります。
子宮のサイズが大きすぎてロボット手術が威力を発揮しにくい場合は、薬で子宮を小さくして手術しやすくするなどの対策も。また、子宮体がんなど悪性腫瘍への適用拡大に向けて、日々の実績を重ねているところです。
※各科の実績は2023年12月時点です