県内唯一の「Xi」2台体制を生かし効率の良い運用で患者さんに応える
手術支援ロボット「ダヴィンチ」は、人間には不可能な関節の動きができる複数のアーム、肉眼では見えない細部までとらえる高精度なカメラを備え、細かく複雑な作業が伴う手術で強みを発揮します。当院では2013年に香川県で初めて泌尿器科で導入し、17年以降は消化器外科・呼吸器外科・産婦人科でも次々にスタート。21年に1台追加導入して「Xi」2台体制になり、22年にはロボット手術センターを開設する一方、患者さんの体格や年齢などにかかわらず一定水準の成果を出せる技術力も確立しました。手術実績の8割以上が泌尿器科のがん患者さんですが、消化器外科でもロボット手術の普及に伴い開腹手術は減少傾向。今後は循環器の領域などにも拡大していく見通しです。
4つの診療科にそれぞれロボット手術ができる医師が揃っていることは、チーム医療の面でも大きな意味があります。一つは医師同士が互いの手術を学び合い、技術的に新しい刺激を受けるチャンスが豊富であること。日々のトレーニングや術後のカンファレンスに加え、異なる診療分野の手技を間近に見る機会があるのは、総合病院ならではの環境です。
もう一つは、複数の科でロボット手術を駆使した協力体制を築きやすいこと。手術の際は必要に応じて他科の医師がサポートに入ることがあり、両科の医師がダヴィンチを使える資格を持っていれば、患者さんの負担を軽減しつつ、より安全・精密な手術を行うことができます。こうした診療科の枠を超えたロボット手術の連携は、泌尿器科・消化器外科・産婦人科間で既に進んでおり、今後は呼吸器と循環器の領域でも同様に図れるでしょう。対象領域の拡大とともに、院内全体のチームワーク向上が期待できます。
これからの課題は、院全体の技術レベルを維持・向上しつつ、ロボット手術ができる人材育成と技術の継承です。ロボット手術は資格を持つ医師のみが執刀できる高度な技術ですから、人材育成もある程度長期的な目線で行わなくてはいけません。まずはこれまで以上に効率的な手術設備の運用と、医師一人一人の研鑽で手術時間短縮に努め、患者さんをお待たせすることがないよう努めていきます。
ロボット手術センター長 川西 泰夫(かわにしやすお)
ロボット手術の様子
医師は患者さんから離れた場所で、ダヴィンチを操作するコンソールに座った状態で手術を行います。術野を立体的に把握できる画面を見ながら、両手足を駆使してダヴィンチのさまざまな機能を使いこなします。
人間の手より関節が多く可動域も広いアーム。用途によってさまざまな鉗子を使い分けます。