「難病」のイメージがある膠原病も、早期発見で適切な治療につながれば、症状のコントロールが不可能ではない時代。原因のよくわからない不調が続いている時は、専門医のチェックを受けてみましょう。
膠原病とは自己免疫性疾患の一つ
膠原病は、共通性がある複数の病気の総称です。原因は不明ながら免疫の異常に関係するとされ、体に入った菌やウイルスを排除する防御システムが何らかの原因でうまく働かなくなり、自分の体を攻撃してしまうことから、さまざまな障害が起きると考えられています。発症のメカニズムがわからないため予防法はないものの、ストレスや風邪など免疫低下につながる要因はできるかぎり改善・予防しましょう。
膠原病には非常に多くの種類があり、代表的なのは「関節リウマチ」「全身性エリテマトーデス」「全身性強皮症」「血管炎症候群」「多発性皮膚筋炎」の5つ。中年の女性患者さんが多いとされますが、病気によって男性や若年層、高齢者に多いものもあり、「中年女性ではないから大丈夫」という油断は禁物です。
代表的な膠原病
1.多発性筋炎・皮膚筋炎
筋肉の炎症によって力が入りにくい、疲れやすい、痛むなどの症状が出る。紅斑や丘疹などの皮膚症状を伴う場合は「皮膚筋炎」に当たる。
2.血管炎症候群
血管の壁に炎症が起きて狭くなり、臓器の虚血・梗塞や出血などを引き起こす。高熱・体重の減少・倦怠感・筋肉や関節の痛みなどの全身症状が特徴。
3.全身性強皮症
皮膚や全身の臓器が硬くなる病気。冷たいものに触れると指先が白~紫色に変色し、温めると元に戻る「レイノー症状」から始まることが多い。
4.全身性エリテマトーデス
初期症状は発熱・関節炎と皮疹、進行すると全身のさまざまな臓器に障害をきたす。顔面の蝶形紅斑がよく知られる。
5.関節リウマチ
関節内の組織が異常増殖して炎症を起こし、進行すると関節の変形や機能障害を引き起こす。関節の痛みが6週間以上続いたら要注意。
治療の進歩でQOL(生活の質)を維持
かつては「一生付き合う難病」「命にかかわる病気」といったイメージがあった膠原病も、近年は治療薬の飛躍的な進歩で症状をコントロールしやすくなりつつあります。
関節リウマチや全身性エリテマトーデスはステロイド治療がよく知られていますが、あくまで対症療法であり、長期の服用で感染症や動脈硬化のリスクが高くなるなど副作用の影響も強いのが課題でした。
1999年、炎症を抑制して症状を改善し病気の進行を抑える画期的な抗リウマチ薬「メトトレキサート」が、日本でも認可されました。続く2003年に認可された「生物学的製剤」は、遺伝子組み換え技術によって生物学的につくられた薬剤で、炎症を起こす物質の働きを抑える効果があります。さらに2013年、炎症物質を伝えるJAKという酵素の働きを抑える「JAK阻害薬」が認可。これらの薬はステロイドと同様に効果が高く、予後の改善も期待でき、病気をコントロールできる可能性が大幅に高くなりました。
膠原病の中でも特にポピュラーな関節リウマチでは、抗リウマチ薬を第一選択薬に、生物学的製剤やJAK阻害薬など複数の薬を総合的に使い分ける薬物療法が主流です。すべてのリウマチ患者さんに効果があるとは言い切れませんが、関節がひどく破壊される例は少なくなりました。服薬で日常生活を無理なく維持したり、いずれ服薬を止められるかどうかの研究も進んでいます。
専門の診療科が誕生!!
当院では2023年から「膠原病・リウマチ内科」を新設し、長年膠原病治療に携わった専門医を中心に、他診療科との連携を生かして診療に当たっています。原因不明の発熱をきっかけにかかりつけ医からの紹介や院内紹介で受診する患者さんが多く、感染症・悪性腫瘍の検査を行い、どちらにも該当しなければ膠原病を疑うことになります。正確な診断や詳しい治療法は、丁寧な問診と血液検査・画像検査を踏まえ、患者さん一人一人の症状に合わせて総合的に判断します。
診断技術や治療薬が進歩しているとはいえ、放置すれば悪化したり死につながるケースもあるため、治療の鍵はやはり早期発見。膠原病は病態がさまざまで、患者さん自身も一般医も膠原病だと気づきにくい傾向があります。原因のよくわからない不調や異常が続く時は、早めにかかりつけ医に相談しましょう。
膠原病・リウマチ内科部長 亀田 智広 より一言
20年にわたって膠原病治療に携わり、新薬の効果を実感しています。膠原病についてわからないことがあれば、気軽に聞いてくださいね。