乳幼児の間で全国的にRSウイルス感染症とヘルパンギーナの大流行が続く今夏。
誰もが子どもの頃に一度はかかるとされる一般的な病気ですが、乳児などは重症化するリスクもあり、油断は大敵です。
保育園や幼稚園などの集団生活環境では完全な予防が難しいこともあり、香川県でも流行警報が発令されるなど、患者数が急激に増えています。特にRSウイルス感染症は夏から秋にかけて流行することが多いはずが、今年はゴールデンウイーク頃から3カ月以上流行が続く異例の感染状況です。
RSウイルス感染症
【原因】RSウイルスの飛沫・接触感染
【主な症状】発熱・咳・鼻水などの風邪症状
2~3歳までに一度はかかる病気と言われ、その後も再感染したり大人でも発症することがありますが、年齢が上がるほど症状は軽くなります。乳児が初めて感染した場合、重症化して呼吸困難や気管支炎、肺炎などを引き起こす場合があり、特に注意が必要です。
【治療】対症療法が中心です
風邪症状を抑える市販薬も使えます。呼吸困難が強く表れた場合などは入院し、点滴、酸素投与などを行います。重症例では人工呼吸器による呼吸管理が必要になることもあります。
【受診の目安】・熱が下がらない・咳がひどくなる・喉がゼイゼイ鳴る・息が苦しい
4~6日の潜伏期間を経て発症し、通常は軽症で済みますが、上のような症状が現れたらかかりつけ医に相談しましょう。乳児のRSウイルス感染症は急激に悪化して入院が必要な場合も少なくありません。
【予防】現時点で有効なワクチンなどはありません。
一般的な感染症対策と同じく「手洗い」「マスク」「咳エチケット」などが一番の予防策です。特に重症化しやすい早産児、先天性心疾患や慢性肺疾患を持つ児、ダウン症児は感染予防効果が期待できる「モノクローナル抗体」の注射の対象となります。 また、乳児がいる家庭は感染した年上のきょうだいから乳児にうつさないよう、保護者が配慮しましょう。
ヘルパンギーナ
【原因】主にコクサッキーA群ウイルスの飛沫・接触・経口感染
【主な症状】 ・突然の高熱 ・喉の奥に口内炎ができる ・下痢を伴うことも
患者さんのほとんどが4歳以下の子どもで、例年5~7月頃に流行する「夏風邪」と呼ばれる病気。原因となるウイルスがいくつかあるため、何度もかかる場合があります。口内炎の痛みで飲食がしづらくなりがちで、乳児は脱水症に注意が必要です。
【治療】対症療法と水分補給が中心です
重症化して合併症などを引き起こした場合は、入院治療もありえます。熱や痛みをやわらげるために解熱鎮痛剤を使ったり、こまめに水分をとらせてあげましょう。水分や食事がとれず脱水になったり、合併症が起きた場合は、入院治療をします。
【受診の目安】・熱が下がらない・吐き気や頭痛がある・口内炎の痛みで飲食ができない
2~4日の潜伏期間を経て発症し、熱はあまり高熱にならず数日で下がった後で口内炎も治まっていきますが、まれに髄膜炎や脳炎、急性心筋炎などの合併症を起こすことがあります。
【予防】現時点で有効なワクチンなどはありません。
一般的な感染症対策と同じく「手洗い」「マスク」「咳エチケット」などの徹底が一番の予防策です。
感染後1カ月程度は便からウイルスが排出され続けるため、感染・発症した子のトイレやおむつのケアをした後はしっかり手指を洗いましょう。
小児科 市原朋子 部長から一言
予防には、石鹸などでしっかり「手洗い」やアルコール消毒液などで「手指を消毒」し、外出や登園時は「マスクの着用」が有効です。小さい子にマスクや咳エチケットの徹底は難しいかもしれませんが、互いにうつさないよう、できることから工夫しましょう。家庭内に発症者がいる場合は、食器やタオル、おもちゃなどを共有しないよう気をつけることもおすすめします。「受診の目安」を参考に、子どもの状態に応じてかかりつけ医を受診しましょう。