心不全では、レニン・アンジオテンシン、アルドステロンなどのホルモンが過剰に分泌されて、体に水分とナトリウムが溜まる結果、血液のうっ滞が起こり、心臓のポンプ機能が低下することにより、息切れやむくみといった症状が現れます。
心不全薬物治療の目的は
① 息切れやむくみなどの症状を改善すること
② 心不全の進行を抑え、心不全の増悪による入院を防ぎ、長生き出来るようにすること
心不全の進行抑制、生命予後の改善を目的として4種類の薬剤を中心に使用します。
⑴レニン・アンギオテンシン系抑制薬:心臓を保護する
・アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬:イミダプリル、エナラプリルなど
・アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB):アジルサルタン、オルメサルタン、カンデサルタンなど
・アンジオテンシン受容体-ネプライシン阻害薬(ARNI):エンレスト®
⑵ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA):心臓を保護する
・スピロノラクトン、エプレレノンなど
アルドステロンという水分貯留や血圧上昇に関与するホルモンの働きを抑え、心臓を保護します。副作用として、血中カリウム値が上昇する、胸が張るなどの症状が出ることがあります。
⑶β遮断薬:心臓を休ませる
・ビソプロロール、アテノロールなど
心不全によって活発になった交感神経の緊張を和らげ、血圧を下げたり、脈を遅くしたりすることで心臓の負担を軽くし休ませます。少ない量から始め、血圧・脈拍・症状をみながら徐々に増やしていくと心臓の働きがよくなっていきます。
⑷SGLT2阻害薬:心臓を保護する
・ジャディアンス®、フォシーガ®
尿からの糖と水分の排泄を増やすことで、体の余分な水分や塩分を排出させる作用や、心臓を保護する作用があります。尿量が増えたり、尿が近くなることがあります。 副作用として、排尿時の違和感や痛み、ふらつきやだるさなどが出ることがあります。また、発熱や下痢などで、食事が出来ないときには休薬が必要です。
他にも、体にたまった余分な水分や塩分を尿として体の外に出し、心臓の負担やむくみをとる利尿薬、心臓の働きを悪化させることなく脈をゆっくりにするHCNチャネル遮断薬、血管を広げ、心臓の収縮エネルギーの効率を高める可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬、心臓の筋肉に作用して、血液を送り出すポンプ機能を強くする強心薬なども使われます。
心不全は風邪などと違い、治る病気ではありません。調子が良くなったからと自己判断でやめずに、毎日忘れずに継続して内服することが重要です。また、心不全の患者さんの内服薬は錠数が多くなることが多く、一包化や服薬カレンダーの活用、服薬管理へのご家族の介入、手助け、声かけも継続した心不全治療のために重要です。