最近増えているのは心原性脳梗塞
「脳梗塞」は脳動脈硬化により脳血管が閉塞しておこりますが、近年は加齢とともに心臓が弱り、心房細動などのリスク要因を持っていて心原性脳梗塞を起こす高齢の患者さんが増えています。
「脳出血」の原因の多くは高血圧。血圧管理が進歩したことから全体的に減少傾向にはあります。高血圧だとわかっているのに何年も放置して脳の血管が弱っている人などは、たとえ若くても発症リスクが高まります。
「くも膜下出血」のほとんどは、脳の動脈瘤の破裂が原因です。動脈瘤ができる原因はよくわかっていませんが、破裂すると3分の1の人が即死、医療機関で治療を受けて「自力で生活できるまで回復する人」と「重度の後遺症が残る人」が3分の1ずつとされ、どうなるかは瘤が破れてから数秒・数分の出血量次第です。
脳機能の温存が回復の鍵
脳卒中を起こした時点で、脳は破壊されてしまいます。手術で出血を取り除くなどの治療をしても、傷つかずに残った脳を救うことはできますが、一度破壊された部分は二度と元に戻りません。脳が受けたダメージの度合いによってさまざまな後遺症が残り、「脳機能をどれだけ温存できるか」が、回復の鍵を握っているのです。
顔・手・言葉に関する突然の障害は要注意
梗塞や出血が起きた場所によって症状はさまざまですが、体の片側のみの麻痺、手足などのしびれ、言語障害、めまい、視力や視野の障害、激しい頭痛などが突然現れたら要注意。顔・手・言語の障害には特に注意しましょう。くも膜下出血の場合は、破れて出血した瞬間に「頭に雷が落ちたような」「バットで殴られたような」といった表現に象徴される強い痛みを感じます。
高齢者だけでなく、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの傾向がある人、喫煙や過度の飲酒が習慣になっている人は、リスク要因となる疾患の治療と、生活習慣の見直しが大切です。
脳梗塞は発症4.5時間以内なら投薬治療も
脳卒中は数時間で重篤化するケースもありますから、疑わしい症状が出たら一刻も早く医療機関を受診するよう心掛けましょう。
特に脳梗塞の場合は、発症から4.5時間以内なら血栓を溶かす薬「TPA」を投与できます。検査や診断に必要な時間を考慮すると、発症から3時間以内には脳卒中治療ができる医療機関に到着しているのが理想的。初動の速さがスムーズな治療につながります。