放射線治療医の治療計画に基づいて、実際に患者さんに照射するのは診療放射線技師の仕事。
放射線治療中の日常生活にさまざまなストレスを抱える患者さんの心身を、がん放射線療法看護認定看護師がサポートします。
放射線治療における有資格者の役割
●医学物理士
照射計画の検証、正確に照射できるかどうかのチェック
●放射線治療専門放射線技師
放射線治療全般のプラン確認、機器のメンテナンスと管理、医学物理士のサポート
●放射線治療品質管理士
放射線治療の品質保証・品質管理の主軸として安全管理に努める
●がん放射線療法看護認定看護師
放射線治療に関する専門的な知識や治療中のセルフケアなどの情報を提供
技師と看護師が患者さんに寄り添う
診療放射線技師は「放射線を使ったがんの治療」だけでなく、「CT・MRI・血管撮影・核医学などの画像検査」「利用方法に沿った各画像データの処理・管理」「安全管理と放射線に関する問い合わせ対応」など、さまざまな形で各診療科の治療を支える、言わば縁の下の力持ち。当院では、さらに「医学物理士」、「放射線治療専門放射線技師」、「放射線治療品質管理士」の資格を取得している技師が在籍し、IMRTをはじめとした高精度治療を安全に行うことのできる体制が整っています。
がん放射線療法看護認定看護師は、日本看護協会が定める「特定の看護分野において熟練した看護技術と知識を有する看護師」である認定看護師のうち、がん放射線療法のエキスパート。現在全国で356人、県内では3人しかおらず、そのうちの1人が当院のスタッフです。がんの放射線治療を受けるのは外来患者さんが多く、治療のサポートとともに通院の不安や悩みも受け止めて、治療を続けていくお手伝いをしています。
1回当たり20分程度 通院での治療がほとんど
放射線治療というと「ちょっと怖い」「大変そう」「副作用は大丈夫?」などの不安を漠然と抱きがちですが、実際の照射時間は1分程度、照射されてもほぼ何も感じず、リニアック室に入ってから出るまで10~20分で終了するケースがほとんどです。服装も普段通りでOK。仕事の休み時間や時間休を利用して通院する人も少なくありません。
副作用は「照射したところに出る」のが特徴で、軽い皮膚炎などをはじめ照射部位に何らかの症状が出ることはありますが、全身に重い副作用が及ぶことはまれです。治療開始後2週間ほど経ってから少しずつ表れるため、短期間で終わる計画であれば副作用を感じないこともありえる半面、まれに治療が終わって半年〜十数年後に副作用が起きる方がいますので、副作用のストレスを軽減するケアも視野に入れます。
毎日継続が大事!不安は気軽に話して
放射線治療で重要なのは、「毎日少しずつ当てる」こと。患者さんは治療計画に基づいて、治療期間中は毎日来院する必要があります。「今日は病院が億劫だな」「ちょっと小旅行に行きたいから」といった軽い気持ちで中断してしまうと、同じ部位には再照射ができないため、放射線とは別の治療方法を模索することになります。
治療をやり遂げるには、「毎日欠かさず続ける」モチベーションの維持が大切です。治療や症状に関する不安や悩みを1人で溜め込まず、話しかけやすい周囲の医療スタッフに気軽に声をかけてください。ケアが必要な情報はスタッフ間で共有して、チーム一丸で患者さんのサポートに当たります。
がん患者さんは、多くが精神的に追いつめられています。人知れずストレスを溜め込んでしまっているケースが多く、一見元気そうに見えても無理をしていることも…。家庭や職場など患者さんの周囲で見守る人たちは、日常生活や仕事の中で患者さんの代わりにできることを率先してこなしたり、症状がよくなってきたら一緒に喜んだり、できるかぎり患者さんの心身に寄り添うよう心掛けましょう。
こんなアイテムも進化しています 放射線治療用フィールドマーカー
治療機器や治療方法の研究が進む一方、照射の基準として肌につけるマークも進化しています。以前はインクを使っていたため、肌の上でにじむ、汗や入浴で消える、服を汚すといった問題もありましたが、数年前にシールタイプが登場しました。水に濡らすとマークの部分だけが鮮明に肌に残り、意図的に落とそうとしないかぎりは2週間ほど消えません。マークを消さないよう注意して生活しなくてはならないストレスから、患者さんを解放してくれます。こうした小さな改善も、患者さんのモチベーション維持にとっては大切な進歩です。