今年4月に当院内スタッフの新型コロナワクチン接種が始まり、2回目の接種を終えて1カ月ほど経った5月に抗体検査を行いました。
その結果をもとに、推定できるワクチンの効果や副反応の実態などを、大西副院長と検査部の福長医師が分析しました。
2回接種でより高い効果
ウイルスに対する免疫力そのものを測ることはできませんが、抗体検査では体内の抗体※1の値(抗体価)を測ることで、ウイルスの感染を防ぐ中和抗体※2ができているかどうかを推定します。
新型コロナワクチンは、2回接種してから2週間程度で抗体ができるとされます。当院では、院内スタッフ1057人(2回接種1042人・副反応等により1回のみ接種15人)を対象に行った抗体検査で、全員にワクチンの効果を示す値が見られました。 結果をみると、年齢が若いほど抗体価も高く(図1)、男性に比べると女性の方が高い傾向もあります(図2)。また、ワクチンを1回のみ接種した人と2回接種した人では、抗体価に明らかな差が見られました(図3)。2回接種することによるブースター効果※3がはっきり出た結果です。
現在、世界中でさまざまな変異株の拡大が報道されていますが、アルファ株についてはワクチンの効果はほとんど落ちないとされます。一般的にウイルスはどんどん変異を起こしていくため、新しい変異株に対する従来のワクチンの有効性については未知の部分も多いものの、少なくとも「ワクチンを接種しても変異ウイルスに対してまったく効果を発揮しない」ことはないと考えられています。
また、ワクチンを接種してもCOVID-19に感染するケースはあり得ます。ただし未接種で感染した人に比べて、排出するウイルスの量が少なく排出期間も短く、無症候性感染者の割合が高い、症状のある期間が短いなど重症化のリスクを下げる効果が期待できるようです。
※1:抗体…体内に入ってきた異物に対応するためにリンパ球がつくるたんぱく質
※2:中和抗体…病原性を抑える作用のある抗体
※3:ブースター効果…体内で一度つくられた免疫機能が、ふたたび同じ抗原(細菌・ウイルス・花粉など人体にとっての異物)に接触することによってさらに高まることを期待する追加免疫効果
ワクチンの副反応にも世代・男女差が明確
ワクチンを2回接種した院内スタッフが任意で回答したアンケートによると、新型コロナワクチン接種に伴う副反応については、1回目より2回目に接種した時の方が全身反応が強く出るケースが多い様子。発熱や倦怠感、疼痛を強く感じたという結果が出ています(図4)。こちらも年齢が若いほど症状が強い傾向があります。
2回目の接種後に「37.5度以上の熱が出た」人のデータを見ると、20~40代では男女とも4~6割程度に症状が出ている一方、50代以上では女性の約半数が発熱したのに対し、男性は2割程度、60代ではゼロと大きく男女差が出ています(図5)。
ワクチン接種に伴う副反応は、ワクチンの製造会社によって症状や頻度に多少の違いは見られるようですが、重篤なアレルギー反応などの場合を除いて、いずれも数日で落ち着くものがほとんどです。ワクチンを接種したことによる発熱には、市販の解熱鎮痛剤を服用できます。インフルエンザと違って、成分にアセトアミノフェンを含まない市販薬でも構いません。ただし、発熱を予防しようと接種の前に薬を飲んだりはしないでください。熱がなかなか下がらないなど、症状が長引く場合は医療機関を受診しましょう。
ワクチンを打っても油断しないで!
今回のデータで、「新型コロナワクチンを2回接種して2週間程度経過すれば、一定の免疫効果が期待できる」ことがわかりました。しかしワクチンはあくまで安心材料の一つ、リスクを下げることを期待するものであり、ワクチンを打ったからといって絶対に感染しない保証はありません。
自分の感染リスクを下げることで、周囲に感染を広げるリスクも下げることができます。身近に体の弱い人や高齢者などがいる場合は、ワクチン接種がリスクの低減にもつながります。
感染症を予防するには、まず「自分の力を強める」ことが大切。ワクチンもあくまでそのための方法の一つです。日々のマスク着用とうがい・手洗いを徹底し、密な空間を避けるなどの基本的な感染症対策をしっかり続けながら、バランスのいい食事や適度な運動などで健やかな体を保ちましょう。