国内でも接種が始まった新型コロナウイルスのワクチン。
ワクチンの効果や必要性、接種を受ける際の注意点などをご紹介します。
(記事は2021年5月28日現在の情報に基づく内容です)
Q1 なぜワクチンを打つの?
人体には、細菌や微生物が体内に入って感染症を引き起こすと、次に同じ感染のリスクにさらされた時に体を守る抗体をつくる「免疫システム」があります。ワクチンはこのシステムを応用し、あらかじめ接種しておくことで特定の病気にかかりにくくするものです。
抗体があると発症しにくい・かかっても重症化しにくいというメリットがあるだけでなく、多くの人が予防接種によって免疫を獲得することで大きな流行を食い止め、ワクチンを打てない人たちや重症化のリスクがある人たちを守ることにもつながるのです。
Q2 新型コロナワクチンにはどんな種類があるの?
無毒化したウイルスを使う「不活性化ワクチン」や弱毒化したウイルスを使う「生ワクチン」など従来のワクチンは、ウイルスそのものの一部を注射するものでした。
現在、日本ではすでに接種が開始されているファイザー社に続き、米国モデルナ社と英国アストラゼネカ社のワクチンも承認されました。ファイザー社とモデルナ社のワクチンはmRNAワクチンと呼ばれ、新型コロナウイルスそのものではなく「ウイルスのたんぱく質をつくる元になる遺伝情報」の一部を注射し、その情報をもとに体内でウイルスのたんぱく質を作り、そのたんぱく質に対する抗体をつくることで免疫ができます。
アストラゼネカ社のワクチンはウイルスベクターワクチンと呼ばれ無毒化した別のウイルスの中に遺伝子の情報を組み込み、体内に運ばせて同じように抗体をつくらせます。
Q3 ウイルスの遺伝情報を入れて大丈夫?
mRNAワクチンで注射する遺伝情報は短期間で分解されます。人間のDNAに作用したり、変異をもたらすものではありません。ウイルスそのものを打つわけではないため、予防接種をしたことが原因で新型コロナウイルスに感染するリスクはありません。
Q4 ワクチンの種類や効果は?
ファイザー社のワクチンについては3週間間隔で2回接種が必要で、最も高い発症予防効果が得られるのは、2回目を接種してから7日程度以降です。体の中である程度の抗体ができるまでに1~2週間はかかります。
免疫の持続期間や変異ウイルスに対する効果はまだ検証中ですが、いずれも一定の効果はあると考えられています。2回の接種は同じ種類のワクチンを打つことが必要です。また、1回目の接種から3週間を超えた場合は、できるだけ早く2回目の接種を受けてください。
Q5 どこで受けられる?
指定医療機関での個別接種と、各市町の集団接種があります。接種の時期より前に「接種券」と「新型コロナワクチン接種のお知らせ」がお手元に届きます。接種には事前に電話やインターネットでの予約が必要です。ワクチン接種が受けられる場所や日時については、お住まいの市町にお問い合わせください。費用は無料です。
Q6 既に新型コロナウイルスに感染していても打つべき?
治って間もない場合は、ワクチン接種までに一定期間空ける必要があります。詳しくは主治医にご確認ください。
Q7 副反応が気になる…
ワクチンの接種により免疫ができる以外の反応を、医薬品で起こる「副作用」とは区別して「副反応」といいます。抗体を作る過程で起こるからだの反応です。起きるかもしれない副反応として、「注射した部位の腫れ」が接種した人の約7割にみられました。疲労感や頭痛、筋肉や関節の痛み、寒気、発熱、吐き気なども1~3割ほどみられます。これらは接種当日~翌日に発症して数日以内に治まるケースがほとんどです。1回目の接種によって体内にある程度の免疫がつくられるため、2回目の接種の時に反応が強くでることがあります。
必要な場合は解熱鎮痛剤を服用するなどして、様子をみていただくことになります。
頻度はまれながら、重い副反応のアナフィラキシー(急性のアレルギー反応)はワクチン接種直後から30分以内に起こることが多いので、こうしたケースに備えて接種後に経過を観察する時間を設け、医師や看護師が待機しています。
こんな症状が出たら直ちに近くのスタッフに伝えてください
Q8 高松赤十字病院で接種は受けられる?
当院は超低温冷凍用ディープフリーザーをはじめ、ファイザー社のワクチン保管に必要な設備と輸送体制を備えた「基本型接種施設」に指定され、当院から地域の医療機関(サテライト型接種施設)にワクチンを移送する拠点となっています。また、当院は高松市の集団接種会場になっています。
予約の際は
高松市新型コロナワクチン接種コールセンター電話:087–887–7547 に電話をしてください。
※なお当院での個別接種は受け付けていません。
Q9 接種を受けられない人はいる?
接種に当たって明らかな発熱がある、重い急性疾患にかかっている、ワクチンの成分に重度の過敏症の既往歴がある場合は受けられません。基礎疾患を持つ人、過去に免疫不全・けいれん・予防接種によるアレルギーが疑われる症状が出たことがある人なども注意が必要です。
また、他のワクチンを接種している場合は2週間以上空けてから接種してください。通院中の方はかかりつけ医に接種可能かどうかを確認しておいてください。
Q10 接種を受ける際の手順は?
予診票をあらかじめ記入し、予約した日時に医療機関で問診を受けてから接種します。接種後15分ほど経過を観察して異常がなければ終了です。
新型コロナワクチンは筋肉注射で、皮下脂肪の奥にある筋肉に注射する方法をとります。肩の筋肉に打つため、片方の肩をサッと出せる服装や、袖の短い服の上にカーディガンを羽織るなど着替える手間が省ける服装をおすすめします。
「ワクチンを打っても 油断しないで!」
ワクチンを打ってから効果が出始めるまでには1~2週間程度かかり、接種後も感染する場合はあります。また、自分が接種を済ませていても、社会全体で集団免疫を獲得するには時間がかかります。接種後もマスクや手洗い、三密を避けるなどの感染対策に努めることが大切です。
高松赤十字病院 薬剤部副部長 岡野 愛子