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感染管理体制の向上と医療の安全・安心のために

(左)高松赤十字病院 院長 西村 和修(にしむらかずのぶ)
(右)副院長(第一血液内科部長)
   院内感染対策室長 大西 宏明(おおにしひろあき)


今年9月、当院看護師に新型コロナウイルス感染者が発生しました。厳重に隔離された病棟での感染発生で、一般病棟や外来へ拡がることはありませんでしたが、医療従事者として反省を踏まえ、感染拡大防止と予防体制強化を進めている当院の取り組みをお伝えします。

11月下旬に強化体制始動


コロナ研究も医療の現場も大きく変化。古い情報に振り回されないで(西村)

【西村】 新型コロナウイルス感染症が本邦でも本格化した2月より当院でもガイドラインに沿ったマニュアル作成やゾーニングを行なっていましたが、当院職員の感染を受けて対策を強化しました。具体的には10月にコロナ対策特命チームをつくり、「発熱対応部会」「軽・中等症部会」「重症・専門診療部会」「手術・侵襲治療部会」「感染・規制調整部会」「コミュニケーション部会」の6部会を設けて、各部会で既存マニュアルのブラッシュアップや体系化を行い、同時に全職員がすぐに見られるようにしました。

【大西】 感染・規制調整部会とは、コロナ関係に従事していない職員の教育、外部委託スタッフへの啓発など、既に第3波が来ている中でもウイルスが侵入しないよう、総合的に調整してくれています。

【西村】 当院では8月から、感染拡大圏の区分を「患者発生数が1週間10万人当たり2.0人~15人以上」まで独自の4段階に細かく分けていて、フェーズごとにメリハリある対策をとる方針です。

【大西】 県は「1週間10万人当たり5人」と区切っていますが、当院も、おそらく他の医療機関でも5人より下げて厳しい基準にしている。特に当院は重症患者さんの入院・外来が多いことから、とにかく重症の人にコロナを感染させないのが当初から最優先事項でした。今回職員が感染して変化したのは、「患者さんの安全を確保した上で、職員も守らなければならない」という認識を再確認しました。このため6部会のつくるマニュアルの基本構想にも、それをきちんと規定しています。

【西村】 マニュアル作成と同時に訓練やシミュレーションも実施し、11月下旬には強化した新体制で本格的に運用できる見通しです。9月の院内感染、ここ数週間の感染拡大などを受けて、スタッフも危機感と意識が高まっているのではないでしょうか。

的確な予防と検査の活用で今冬を乗り切りたい


コロナ対策の一環で、最新鋭の電動ファン付きマスクも導入しました(大西)

【西村】 コロナ禍の一方で、経済も回さねばという時期に来ていますね。病院の対応も、半年前とはかなり違ってきています。以前より早く的確な診断ができるようになり、治療薬こそ充分ではないものの重症化を防ぐ手立てがわかってきて重症患者は減っている。検査による水際でのブロックの精度も上がっています。体制が整っているからこそ、経済を動かせるんです。
 当院も感染拡大地域との交流はある程度自粛し、やむを得ない場合は検査を上手に使うとして、フェーズの低い地域との行き来までは禁止していません。マスクをして3密を避ける、大勢の会食を避けるといった予防法を守れば、何とか冬を乗り越えられるのでは…。

【大西】 万一かかっていても、本人と周囲がマスクや手洗いを徹底していればそう簡単にはうつらないこともわかっているので、職員を啓発し、体調が悪ければ抗原定量検査を受けるよう徹底しています。現在は精密な検査があって早期に感染が見つかるため、ちゃんと健康管理をして出勤・外出もして、不調な時は検査で発見していこうという方向です。

【西村】 大病院だけでなくクリニックでも充分な検査ができるようになって、状況はかなり変わりましたね。都会に先駆けて、4月頃から無症状でも全例検査をやっていた香川県の陽性率は、現在だいたい1%。検査をして、陽性率をみながら全体をコントロールしていくのが重要です。

検査精度は向上!


2台目の抗原定量検査機器を導入し、検査体制がさらに充実

【大西】 PCR検査と抗原定量検査が2大柱で、短時間で大量処理できて感度もいいとされる抗原定量検査は、当院でも早期に導入し、最近1台増やして2台体制になりました。最短30秒で1件、1時間で約100件、それが2台体制ですから心強い。検査部はISOという国際標準のマニュアルを整備していて、対応も万全です。1時間くらいで結果がわかるのは、患者さんと我々の安心だけでなく、医療者にとって「冷静かつ妥当な対応ができる」というメリットが大きいんです。

【西村】 特に救急患者さんに抗原検査がすぐできるのはありがたいですね。潜伏期間のリスクはどんな検査でも残りますが、「現時点ではウイルスがいない」前提で対応できるのは大きい。

【大西】 診断技術が向上し、有効な治療法が確立されつつある一方、半年前から変わっていないのは、マスク・手洗い・3密を避けることです。

【西村】 感染経路は、エアロゾル感染が主体ではないかと言われるようになりました。スパコン富岳の「フェイスシールドでは目の防備が弱い」というシミュレーションもあり、感覚的には感じていても、ゴーグルがそこまで重要という認識は以前はなかった。いろんなことがわかって、我々自身も随分変わってきたと思います。

【大西】 メディアに出てくる専門家の話などは、たまに首をかしげることもありますが、行政の情報は信ぴょう性が高いと感じます。世間の皆さんには、香川県・高松市や保健所のアナウンスに耳を傾けることをおすすめしたい。

【西村】 大西先生はずっと感染対策のご担当、私は副院長時代に医療安全の担当で、両輪でやってきました。いろんな体制を整え、強化していますから、安心して来院していただきたいですね。


                                     令和2年11月12日 取材


表紙

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vol.70

最新号

「高松日赤だより なんがでっきょんな」は、患者の皆さんに高松赤十字病院のことを知っていただくために、季刊発行する広報誌です。季節に合わせた特集や役立つ情報を掲載いたします。冊子版は、高松赤十字病院の本館1階の③番窓口前に設置していますので、ご自由にお持ち帰りください。左記画像をクリックすると、PDFでご覧になることもできます。

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Columnvol.70の表紙のひと

1年目初期研修医

4月より新しく加わった10人の研修医です。今回の表紙は当院の目の前に広がる中央公園にて撮影しました。当日はよく晴れて、少し汗ばむ陽気でしたが若さあふれる元気いっぱいの一枚になりました。 まだまだ不慣れなこともあるとは思いますが、どうぞ温かい目で成長を見守ってください。