さぬきの健康と元気をサポートする高松日赤だより

なんがでっきょんな

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高度周産期医療を支えるちから


妊娠中の女性、不妊に悩む女性、がんと闘いながらも将来子どもを産むことのできる可能性を残したいと考える女性を支えているのは、医師だけではありません。
チーム医療の一員として周産期医療にかかわる人々をご紹介します。

本館北タワー 5F 産科

これまでの「産婦人科」が「産科」と「婦人科」の病棟に分かれ、産科病棟は妊娠中から分娩〜産後、退院後の1カ月健診までをケアします。
出産を終えてすぐの産じょく早期から母子同室を実現し、 人の助産師が、医師とともに専門知識を生かしてきめこまやかな看護を行っているのが特長。妊娠初期は週数に応じた注意点や保健指導、さまざまな説明を行い、後期はマタニティクラスを中心に、出産に向けて心身の状態を整えていきます。


「新生児サロン」では医師や看護師が健康状態などをチェック

院内外と連携し産前産後をサポート

産後に小児科のケアが必要な場合も、情報交換を徹底してスムーズに連携。家族や地域とのつながりが薄く育児サポートの少ない人には、地域の保健師などと協力して、入院前後で切れ目ない看護ができるようつないでいきます。不妊治療を経てきた人には、臨床心理士が心身のケアをサポート。高齢出産や多胎児などリスクの高い人向けの支援・指導も丁寧に行います。

院内助産のすすめ

異状なく自然分娩を行えそうな場合は、院内助産も積極的に進めてきました。陣痛から分娩、回復期までずっと過ごせるLDR室で家族の立会いのもと分娩、授乳も母親のペースで行う家族的なスタイルです。現在はコロナ禍の影響で中断していますが、いずれ再開できるようになった際は、満足度の高い助産の一つとして力を入れていきたい取り組みです。

助産師の育成はマンツーマンで


当院は新人一人一人に先輩看護師(プリセプター)がつき、一定期間マンツーマンで指導に当たるプリセプター制度を導入しています。産科病棟でもこの教育スタイルを徹底し、分娩をスムーズにサポートできるよう、さまざまな症例に応じた指導を図ってきました。1~2年がかりで30例ほどの分娩ケースを経験したら、先輩や上司の面接を経て一人前と認められます。
「患者さんはバックボーンが一人一人違います」と語るのは、助産師として経験豊富な篠原雅子看護師長。「その人に合わせたケアをするためには、きちんと話を聞くことが何より重要。産婦さんの背景に応じて、心に寄り添う、幅広くきめ細いサポートが求められます」。
2019年度から産後2週間健診が始まり、出産1カ月以内の母親の心のケアも重視するなど、助産師のかかわる仕事が多様化する中で、体制の充実は課題の一つです。




看護師長 
篠原 雅子(しのはらまさこ)

近年は外で子どもとふれあう機会が少ないこともあり、正しい知識を育むための乳児指導は重要です。外来での指導がきちんとできていれば、スムーズな育児につながりますよ。出産・育児に関する情報や常識は、おばあちゃん、お母さんの時代とはどんどん変わっています。妊婦さんだけでなく、家族も積極的にマタニティクラスに参加して、最新の知識を学んでいただくことをおすすめします。




本館北タワー 7F 高度生殖医療センター

不妊治療には、精子を子宮内に戻す人工授精や体外に取り出した卵子を精子と受精させて得られた受精卵を子宮内に戻す体外受精があります。これらの医療は専門技術をもつ胚培養士を中心に行なっております。がん患者さんの妊よう性温存では、これまで実施してきた精子凍結に加え、卵子や卵巣組織の凍結保存も実施していきます。原疾患の治療開始までに時間的猶予がないこともあるかもしれませんが、そんな場合でも最善の治療法を患者さんと相談しながら計画していきます。


受精卵をつくる方法もさまざま。精子・卵子の状態を胚培養士が丁寧に見極めます


低ストレス・低リスク 安定培養が可能に

高度生殖医療センターでは、新たに「タイムラプス培養システム」を導入しました。内蔵された顕微鏡カメラで10分おきに胚の状態を撮影し、それぞれの写真を連続させることで動画として確認することができるシステムです。胚の状態を診断するAIも搭載されており、より良好な受精卵を選択することで妊娠率の向上に貢献することが期待されます。
本システム導入前は、1日1回胚培養士が胚の入ったディッシュを培養器から取り出して胚の状態を観察する必要があり、この操作により胚が受けるストレスが問題となっていました。タイムラプス培養システムは培養器に入れたままの状態で胚を観察できるため、低ストレス・低リスクの安定した環境下で胚の培養を継続できるのが最大の強みです。



他科とも連携し 妊娠・出産の希望を守る

妊よう性温存とは、抗がん剤や放射線治療によって生殖機能が失われる前に、精子や卵子・受精卵・卵巣組織などを採取し、妊娠・出産を希望する時期まで凍結しておくことで「将来子どもを持つ可能性を残す」医療です。病気を克服した後の患者さんの人生を見すえ、将来の選択肢を守るためには、他科の医師との連携が欠かせません。患者さんにとって最善と思われる治療を相談しながら計画していきます。
高度生殖医療センターでは、月1回不妊治療や妊よう性温存に関する勉強会を開催しており、科の枠を超えた情報共有を目指しています。




胚培養士 
小泉 倫子(こいずみともこ)

胚培養士が携わるのは患者さんの妊娠判定を見届けるまでですが、手放しで喜ぶにはまだ早い段階でもあります。妊娠初期健診が終わったらようやくホッとする感じでしょうか。出産まで当院で行えるので、生まれた時に「この子です、抱っこしてください」と見せに来てくれる患者さんもいて、その笑顔に支えられています。不妊治療や妊よう性温存に不可欠な胚培養士の仕事を院内外により広くお伝えしていけたらと思っています。


表紙

なんがでっきょんな

vol.70

最新号

「高松日赤だより なんがでっきょんな」は、患者の皆さんに高松赤十字病院のことを知っていただくために、季刊発行する広報誌です。季節に合わせた特集や役立つ情報を掲載いたします。冊子版は、高松赤十字病院の本館1階の③番窓口前に設置していますので、ご自由にお持ち帰りください。左記画像をクリックすると、PDFでご覧になることもできます。

Take Free!

Columnvol.70の表紙のひと

1年目初期研修医

4月より新しく加わった10人の研修医です。今回の表紙は当院の目の前に広がる中央公園にて撮影しました。当日はよく晴れて、少し汗ばむ陽気でしたが若さあふれる元気いっぱいの一枚になりました。 まだまだ不慣れなこともあるとは思いますが、どうぞ温かい目で成長を見守ってください。