高松赤十字病院でのキャリアは14年。
副院長を8年間務めた西村和修が、2020年4月から新院長に就任しました。
患者さんのために尽くす医師としての志とともに、院長として目指す体制整備への意欲を語ります。
迷ったら「患者第一」に決断を
私は北九州小倉出身、もとは工学部志望でした。
公害問題が大きく報じられていた時代で、人のためになる仕事をしたかった。
医師の道を意識したのは、大学受験の浪人中に父を心臓病で亡くしたのがきっかけです。
「人のためになる仕事」という点では、共通するところがあったのかもしれません。
当時の循環器・心臓血管系で治療行為を行うのは外科が主体だったので、心臓外科を選択。
今は内科治療も増えていますが、あの頃の内科は診断が中心で、結果がはっきりわかる治療をするなら外科だろうと思ったのです。
心臓外科は生死の瀬戸際の患者さんが多く、リスクと隣り合わせで、うまくいかないこともある。
厳しい道ですが、それだけに患者さんが回復していく姿は大きなやりがいでもあります。
京大大学院を経て、心臓移植で有名なイギリス・ロンドン郊外の病院に3年ほど留学。
京大に戻って10年、天理の病院に3年ほど勤めて、高松日赤には2006年からお世話になっています。
高松の人たちは穏やかで勤勉な印象で、とても働きやすい環境です。
2012年からは副院長として、医療安全の追求、教育研修や救急にもかかわってきました。
当院の理念は「人道と博愛」、人の命と健康、尊厳を守ることです。
かつての恩師たちが口をそろえた「患者さんを第一に考えて行動せよ」という教えにも、通じるところがあると思います。
今も迷った時は「何が患者さんのためになるか」で決断しますし、周囲にも「一日一つでも患者さんの役に立つことをしよう」と指導・提言しています。
働き方改革も課題
4月から本館北タワーが本格稼働し、新しい設備の整った快適かつ高度な医療環境が確立しました。
しかしそれを使うのは「人」、患者さんと接するのも「人」。高いレベルのスタッフがそろってこそ活かせる環境です。
福利厚生を含め、より一人一人のモチベーションを刺激する評価体制をつくり、人を育てていく取り組みが必要ではないかと感じています。
さまざまな業界と同じく、病院にとっても働き方改革は避けて通れないテーマです。日本では、まだまだヨーロッパのような長期休暇が取得しづらいのが現状ですね。
今の働き方の効率そのものに課題があるとすれば、病院もITや複数主治医制の導入など多角的な改革を検討し、スタッフが疲弊しない、働きやすいシステムをきちんと構築することが大切でしょう。
患者さんのご協力とご理解をいただけるよう努力しながら、スタッフが働きやすい環境整備を進め、「患者さんの役に立ちたい」という彼らの気持ちを現場に生かせるよう、院長として努めたいと考えています。
自ら情報発信したい!
これまで各部門の活性化の面では課題も感じていましたが、ここ数年、さまざまな領域で地域トップレベルを目指し上昇してきています。
伝統と信頼に支えられた病院のブランドにおごることなく、より一層高水準で、あたたかみのある医療の実践を目指していくつもりです。
5月からは「うまげな患者塾」と題して、公式サイトで患者さんへのメッセージを直接発信しています。
午前中に30分ほど、外来や総合受付に積極的に顔を出すようにもしています。
直接患者さんとつながり、情報を共有できる場を大切にしたいと思っていますから、気軽に声をかけていただければ嬉しいですね。
高松赤十字病院 院長ブログ「うまげな患者塾」
https://www.takamatsu.jrc.or.jp/director_blog/
高松赤十字病院 院長 西村 和修(にしむらかずのぶ)
日本外科学会専門医/三学会構成心臓血管外科専門医認定機構心臓血管外科専門医/日本循環器学会専門医/日本外科学会指導医/日本胸部外科学会指導医/日本心臓血管外科学会特別会員/日本人工臓器学会特別会員
長年バスケットボールをたしなみ、十数年前からごく最近まで全国の赤十字病院同士のスポーツ大会にも出場。一方でマージャンや将棋のネット対戦を楽しむなどインドアの趣味も持ち、「ストレスは溜めない方ですね」と気さくに笑う。