高松日赤の呼吸器内科医として20年以上のキャリアを築き、 4月から副院長に就任した山本晃義先生。 長年勤めたからこそ見えるこれからの課題と展望とともに、 今の率直な胸の内を語っていただきました。
全国から「選ばれる」病院へ
私が高松日赤で過ごした年月を振り返れば、はや20数年。気がつけば、平成最後の副院長を務めることになりました。大学を卒業して1992年から1年半ほど内科に勤務し、 97年に呼吸器科勤務となってからはずっとここで患者さんと向き合ってきました。私にとって高松日赤はある意味誰よりもよく知る環境であり、スタッフも旧知の人ばかり。ですから、このたびの副院長就任を「新天地で心機一転」といった大きな転機であるとは考えていません。今まで私たちがこつこつやってきたことを踏まえ、できていないこと、足りないことは何かをあらためて見極めていくつもりです。
病院は「患者さんの病気を治す場所」です。患者さんとご家族に満足していただける医療を提供するのが私たちの使命であり、それは医師であろうと看護師であろうと、あらゆる立場のスタッフが共有するべきことだと思うんです。その点、長年勤めていて、当院のスタッフのレベルの高さ、人のよさは肌身で感じるところ。医療人として満足していただける医療を提供してきたからこそ、地域に信頼される病院に成長できたのだとも思いますね。
今後はその優れた医療体制を、地元だけではなく外へ、全国へもっと発信してい新く力が必要です。香川・高松で築いた実績を外部へアピールできているかというと、正直まだまだ課題は多い。当院の取り組みを広く発信できれば、優れた人材が集まり、全国の医療人に「選ばれる」病院になっていくはず。ひいては医療レベルが上がって、患者さんにもより満足していただける環境が整っていくのではないでしょうか。
人材育成に 力を入れたい
呼吸器内科の医師として 常々感じるのは、呼吸器内科医の少なさです。昭和 30年代は呼吸器内科というと結核診療と同義だったほど
で、肺がんなどが増えてきたのは比較的最近のこと。消化器科など他の内科に比べるとまだ新しい分野ということもあって、患者数に比べて医師の数がどうしても少ない。そこを補うために教育に力を入れ、いちはやくチーム医療を確立してきた土壌があります。
2018年に開設した呼 吸器センターを中心に、当院の呼吸器系疾患医療は診断から治療までさまざまなステージにしっかり対応でき、重症化した時の集中治療なども可能な体制が整っています。現在リニューアル中の新病棟が完成すれば、さらにPET検査などもできるようになる予定です。とはいえ、その機能を十分に活かすには、やはり人材の確保が欠かせません。
副院長として研修医の育成に深くかかわっていく上でも、そういう現状の厳しさを痛感しているからこそ、教育を充実させ人材を増やしていきたいという気持ちは特に強いですね。研修医や医師だけではありません。これまでも看護師や理学療法士を全国の学会に派遣するなど、あらゆるスタッフの教育に力を入れてきました。今後もチーム医療という形を見すえ、院内全体での医療レベル向上に取り組んでいきたいと考えています。
自分自身も勉強の日々
副院長として深くかかわることになるのは、先述した「研修医の育成」のほかに、「医療安全の徹底」「保険診療」という主に3つの業務です。医療安全、これもやはり教育が重要ですね。事故が起こってからでは遅い。医師や看護師、事務員に至るまで院内全員が医療安全マインドを持ち、未然に防ぐための教育を徹底することです。保険医療に関しては私自身これまであまりかかわってこなかった業務で、まずは現状と課題をしっかり把握するところからのスタートになりそうです。
これまで呼吸器科部長として科を統括してきましたが、病院全体を見る視点に立つのは初めてのこと。私にとっても未知の世界に足を踏み入れつつ、臨床医としての仕事も引き続き行いますから、体一つでは足りないほどハードな勉強の日々になるだろうと予感しています。
「患者さんに満足していただける医療 を」という信条は揺るぎなく、院内一体で新しいステージに挑戦してまいりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。