さぬきの健康と元気をサポートする高松日赤だより

なんがでっきょんな

病気・治療のこと

不妊に悩む皆さんへ

2018年11月から本格始動した高松日赤の生殖医療センター。
専門医の佐藤幸保先生をセンター長に迎え、一般的な不妊治療にとどまらない高度な生殖医療を展開しています。香川県の不妊治療を、ちょっと覗いてみましょう。



院内連携で男性不妊治療も

不妊症とは、「1年以上夫婦生活を営んでも妊娠しない」状態を指します。女性の排卵がうまくいっていない、卵管の通りが悪い、男性の精子数が少ないなどの要因
が考えられますが、「原因がよくわからない」ことも多いのが現状です。

一般的に、性交を排卵日に合わせる「タイミング療法」からスタートし、服薬や注射で排卵をうながす「排卵誘発法」、運動している精子を濃縮して子宮に戻す「人工授精」と段階を追って試みます。人工授精で妊娠できるカップルは6回以内に妊娠することが多く、それでも妊娠にいたらない場合は「体外受精」「腹腔鏡手術」へと治療のステップアップを考えます。

体外受精を手がけている医療機関は県内にも複数ありますが、当センターの特長は「腹腔鏡手術」と「男性不妊治療」にあります。「腹腔鏡手術を行うことで自然により近い形で妊娠できる可能性があります」と語るセンター長の佐藤幸保先生は、数多くの腹腔鏡手術経験があります。また、当院の泌尿器科には男性不妊の治療に積極的な専門医がそろっています。全身麻酔で無精子症に対する顕微鏡下精巣内精子採取術の手術を行える環境が整っているのは、県内では当院以外にはほとんどありません。

助成金もさまざま
一日でも早く治療を始めよう

 不妊治療の成功率は女性の年齢に大きく左右されます。佐藤先生も「卵子の老化のため35歳を超えたら妊娠率は低くなり、37歳を超えたらさらに加速します。40歳を超えても出産できる女性
もいますが、珍しい例だと考えてください。卵子を若返らせる治療はありませんので、とにかく早く治療を開始するのが大切です」と力を込めます。また、男性側に不妊の原因があるカップルは不妊カップル全体の約半数を占めており、パートナーと一
緒に受診する大切さも強調します。

また、化学療法や放射線療法などのがん治療により生殖能力を喪失する前に、将来的な妊娠を見すえて精子や受精卵を凍結して
おくことも可能です。受精卵の凍結は「パートナーのいる女性」のみが対象ですが、卵子の凍結はパートナーのいない女性でも可能であり、卵巣組織の凍結は思春期前の女児でも可能です。
 「卵子凍結と卵巣組織凍結はまだ当院では手がけていませんが、連携医療機関である京都大学医学部附属病院では積極的に行われており、今後導入していくことを考えています。すでに行っている精子凍結や受精卵凍結はすでに確立された方法であり高い成功率が期待できますので、がん治療に入る前に、ぜひご相談ください」と佐藤先生。


治療は外来で済ませることができるものが多く、治療費への公的助成金制度も整っています。高松赤十字病院は高松市が指定する特定不妊治療指定医療機関の認可を受けています。また、がん治療の前に精子や受精卵の凍結保存を行う費用の一部を香川県が助成する制度も予定されています。

香川県の生殖医療はどんどん進化しています。不妊で悩んでいる皆さん、まずは最初の一歩を踏み出してみませんか。



生殖医療センター長・第二産婦人科部長
佐藤 幸保(さとう ゆきやす)

生殖医療をはじめとする周産期医療全般に興味を持ち、2018年4月から高松赤十字病院生殖医療センター長。
「人間は本来自然に治癒する力をもっている、医師は不必要な医療介入をせず、その自然治癒力を高めるようサポートしてあげることが重要」を信条とし、患者と真摯に向き合い、本人の意思や状態を尊重した治療を行う。
プライベートではウサギを飼っており、夜は家の中で飛びまわっているとのこと。


表紙

なんがでっきょんな

vol.70

最新号

「高松日赤だより なんがでっきょんな」は、患者の皆さんに高松赤十字病院のことを知っていただくために、季刊発行する広報誌です。季節に合わせた特集や役立つ情報を掲載いたします。冊子版は、高松赤十字病院の本館1階の③番窓口前に設置していますので、ご自由にお持ち帰りください。左記画像をクリックすると、PDFでご覧になることもできます。

Take Free!

Columnvol.70の表紙のひと

1年目初期研修医

4月より新しく加わった10人の研修医です。今回の表紙は当院の目の前に広がる中央公園にて撮影しました。当日はよく晴れて、少し汗ばむ陽気でしたが若さあふれる元気いっぱいの一枚になりました。 まだまだ不慣れなこともあるとは思いますが、どうぞ温かい目で成長を見守ってください。