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病気・治療のこと

マダニ感染症に注意!

さわやかな陽気に誘われて、アウトドアシーズン本格到来!
でも、行楽シーズンはマダニの被害が増える時期なのです。
マダニが媒介する病気と咬まれないための予防策をマダニ感染症に詳しい皮膚科医・池田政身先生に伺いました。


発症率は低いものの重症化のおそれも…

マダニ類が媒介する感染症は「ライム病」「ツツガムシ病」「回帰熱」などさまざまですが、そのうち香川県でよく見られるのは、フタトゲチマダニやタカサゴキララマダニなどを媒介とする「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」と、ヤマアラシチマダニやフタトゲチマダニなどを媒介とする「日本紅斑熱」の主に2つです。

日本紅斑熱は徳島県阿南市が国内発祥の地で、ウイルスと細菌の中間のような「リケッチア」という微生物が病原体。38〜39度の高熱と、発熱後3〜4日をピークに麻疹や風疹に似た1〜2ミリの紅斑が全身に出るのが特徴です。SFTSの病原体はウイルスで、発熱、血小板減少、腎機能悪化などが主な症状のウイルス感染症です。

すべてのマダニが病原体を持っているわけではなく、マダニに咬まれたからといって必ず発症するわけではありません。病原体の数や咬まれた人の免疫状態によっても、感染確率は異なります。「発症する確率はSFTSだと0.3%程度で、発症しても軽度なら無症状もしくは軽い風邪くらいで済む人もいます。ただし発症者の3〜5割は死亡する上に、治療薬がなく対症療法にならざるを得ません」と池田先生。日本紅斑熱には治療薬がありますが、こちらも重症化すると多臓器不全やDIC(播種性血管内凝固症候群)を引き起こすおそれがあります。

マダニに咬まれて数日〜1週間以内に熱が出たら、まずは病院で検査を受けましょう。刺し口からの遺伝子検査を行えば数時間で感染症かどうか判断でき、適切な治療がスタートします。


咬まれた時は無理に引き抜かず病院へ

マダニの宿主は主にイノシシやシカなどで、これらの動物が棲む場所でよく見られます。森林よりは草むらに多く、葉の裏をひっくり返してみるとマダニがびっしり、ということも…。犬も宿主になりやすく、散歩中に草むらを通ったりすると飼い犬にもつく可能性があり、犬を通じて人間が咬まれることもあります。マダニのサンプル採取のフィールドワークで各地に足を運ぶ池田先生も、「県内でも屋島や五色台で見かけますし、どこで出てもおかしくない」と注意を呼びかけます。

マダニが吸血するのは、産卵期と脱皮の時です。皮膚にとりついてしばらくするとセメント状物質を出して刺し口に自分を固定し、数時間から一週間以上かけてゆっくり血を吸い1〜2センチほどに大きくなって、やがて自然に取れ落ちます。

人間がマダニに咬まれても、痛くもかゆくもありません。成虫でも体長数ミリ、成虫になる前の若虫や幼虫は一見ゴミと見間違うほど小さく、咬まれても気

マダニが吸血するのは、産卵期と脱皮の時です。皮膚にとりついてしばらくするとセメント状物質を出して刺し口に自分を固定し、数時間から一週間以上かけてゆっくり血を吸い1〜2センチほどに大きくなって、やがて自然に取れ落ちます。

人間がマダニに咬まれても、痛くもかゆくもありません。成虫でも体長数ミリ、成虫になる前の若虫や幼虫は一見ゴミと見間違うほど小さく、咬まれても気づきにくいため、血を吸って目視できるくらい大きくふくらんでから「マメやおできだと思ったが、よく見たら手足が動いていた」と驚くケースも多いようです。

「咬まれたことに気づいたら、なるべく早く皮膚科を受診して除去しましょう。放っておいてもいずれ自然にとれますが、万が一マダニが病原体を持っていた場合、長くくっついているほど感染確率が高くなってしまいます」と、池田先生。

ついつい自分で取りたくなるかもしれませんが、セメント状物質で固定されたダニは簡単にはとれません。特に吸血中のダニを無理に引き抜こうとして、ダニの胴体をつまむのは厳禁。ダニが病原体を持っていた場合、吸った血液とともに病原体も体内に逆流するおそれがあります。取り切れなかった刺し口の部分が化膿したり、肉芽腫などの原因になる場合もありますから、病院できちんと外科処置を受けて除去・洗浄することをお勧めします。



皮膚科医師 池田 政身(いけだ まさみ)
2019年3月まで高松赤十字病院副院長、医療社会事業部長、皮膚科部長。
細菌感染症、皮膚外科手術、心因による皮膚病などを専門とし、高松日赤皮膚科に年間2000人の重症患者を受け入れてきた。患者のメンタルを尊重し、「いかに満足してもらうか」を追求。19年4月からは臨床医としての仕事に専念。「ダニと疾患のインターフェイスに関するセミナー」メンバーで、年1回全国各地での研修合宿に参加し「マダニ音頭」を歌って踊るなど、マダニ感染症研究仲間との交流も楽しんでいる。


表紙

なんがでっきょんな

vol.70

最新号

「高松日赤だより なんがでっきょんな」は、患者の皆さんに高松赤十字病院のことを知っていただくために、季刊発行する広報誌です。季節に合わせた特集や役立つ情報を掲載いたします。冊子版は、高松赤十字病院の本館1階の③番窓口前に設置していますので、ご自由にお持ち帰りください。左記画像をクリックすると、PDFでご覧になることもできます。

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Columnvol.70の表紙のひと

1年目初期研修医

4月より新しく加わった10人の研修医です。今回の表紙は当院の目の前に広がる中央公園にて撮影しました。当日はよく晴れて、少し汗ばむ陽気でしたが若さあふれる元気いっぱいの一枚になりました。 まだまだ不慣れなこともあるとは思いますが、どうぞ温かい目で成長を見守ってください。