今や年間3万件以上行われる肺がん手術ですが、高松赤十字病院では、様々な呼吸器外科領域の疾患に対し、平成6年頃より全国に先駆けて胸腔鏡(内視鏡)手術を開始していました。これを更に発展させ、平成23年頃より「肺がん」に対して、完全鏡視下手術を導入しました。
「肺がん完全鏡視下手術」とは
肺がん完全鏡視下手術の特徴は、これまでの開胸手術や胸腔鏡補助下(小開胸)手術と異なり、全て高画質モニター(拡大視)のみで手術を完遂する術式です。脇腹を数センチの穴を3カ所開くだけで済みます。体の負担が少なく、早期退院が可能となりました。筋肉の損傷が少ないため、術後の腕の運動機能も術前と変化なく良好です。また、術者のみが視野を独占する従来の手術とは違い、3つの穴に医師3人がつき、それぞれが術者・助手・カメラの役割を担当します。また、麻酔科医・手術室看護師含め全員が同一視野を共有し、より安全性が高まったと考えています。
ENDOEYE 硬性ビデオスコープ(外径10mm,30°; マルチCCD,HDTV)
※現在のところ、当院に導入されている「ダ・ヴィンチSi」の保険適用は泌尿器科の前立腺がんの手術のみです。
「VATS」を熟成
胸腔鏡手術全般をVATS(video assisted thoracic surgery)と呼び、技術レベルの上昇や安定に努めています。当院では、手術ごとに術者・助手・カメラ担当をローテーションするため、技術レベルが安定しています。若手医師が入っても、他2人の医師でカバーできるので、後進の教育という面でも優れています。
VATSにつきまとう課題は、肺動脈などのもろい血管を傷つけることによる大出血ですが、そのリスクも道具の進歩によって軽減されました。以前は大出血を起こした際には、開胸手術に切り替えて処置をしなければいけませんでしたが、最近では人工糊やシートである程度の出血なら止血可能です。当院では近年、「肺がん」に関して術死や輸血の経験は幸いなく、完全鏡視下手術を円滑に完遂できています。
「肺がん完全鏡視下手術」の実績
肺がんの標準術式である肺葉切除であれば、手術は約2時間30分程度であり、術後約1週間で退院可能です。平成24年1月から平成26年9月までに169名(179症例)の方が肺がんVATS手術(うち85%以上が完全鏡視下手術)を受けられています。肺がん手術は年々増加傾向であり、胸部・乳腺外科/呼吸器内科/放射線科などチーム一丸となって治療を行っていますのでご安心ください。
「肺がん完全鏡視下手術」のお問い合わせ
開胸手術に比べ、胸腔鏡手術が体の負担は少ないことは議論の余地はもはやありません。しかし、あくまで手術は、がん治療(根治)を安全に行うことが目的であり、患者さんは手術法をよく理解したうえで、望むべきと考えます。肺がん完全鏡視下手術や胸腔鏡手術に関するお問い合わせは、胸部・乳腺外科外来までご連絡ください。
TEL:087-831-7101(代)
受付時間:平日の午後3時~4時30分までにお電話ください(通常業務も行っておりますが、可能な限り対応させていただきます)。