再発率の高い膀胱がんを根治するために。香川県で初めて、「光力学診断(PDD)」という今までにない最新システムを導入しました。
再発しやすいと言われる膀胱がん
膀胱がんは、他の臓器のがんに比べて進行が早く、注意が必要な疾患のひとつです。また、同じ膀胱内の違う場所にがんが再発する「膀胱内再発」が多く、早期にがんを見つけて処置を行っても、次に再発したときには進行しているケースもあります。
すなわち、初回手術でいかに精度の高い治療ができるかが重要と言えます。
膀胱の腫瘍は見つけにくい
早期膀胱がんの標準治療は、開腹するのではなく、尿道から内視鏡を挿入し、電気メスを用いて膀胱内の腫瘍を切除する方法です。カメラを通して肉眼で病変を確認するわけですが、微小な病変の場合、どうしても人間の視力では認識できないことがあります。
他にも、「上皮内がん」という病変が上皮内にとどまっているケースでは、通常の腫瘍のように隆起がなく、表面が平坦で、正常粘膜と見分けがつかないこともあります。そのため、膀胱がんでは一定の確率で術後に再発することはやむをえないと考えられていました。
膀胱内の再発率は5年で31%、そのうちの約半数が術後1年以内に再発しているというデータもあり、初回の手術で病変が残ってしまったことが再発の原因のひとつだと考えることができます。
がんを見落とさない「光力学診断(PDD)」
そうした問題を解決するべく開発されたのが、2018年9月に香川県では初めて高松赤十字病院に導入された「光力学診断(PDD)」です。この画期的な診断方法では、がんの部分が発色するため、従来の方法では判別するのが難しかった小さな病変や上皮内がんを見つけられるようになりました。
手術の前に「5-アミノレブリン酸」という薬を内服し、手術中に専用の内視鏡システムを用いることで、膀胱腫瘍が赤色に発光して見えます。このおかげで病変の見落としが劇的に改善され、膀胱内の再発率が低くなったと海外でも証明されています。
小さながんのケース
通常のカメラで肉眼だと判別できない小さながん細胞でも、光力学診断を用いると赤く光って判別できる。
上皮内がんのケース
通常のカメラで見ると、隆起しておらず異常がない粘膜のように見えるが、光力学診断では上皮肉にあるがん細胞も赤く光って見える。
がんの治療は、根治が一番です
膀胱がんを再発させないためには、最初の手術で完璧に腫瘍を取り除くことが重要です。私たち医師にとっても、この「光力学診断」は今までにない非常に有用な方法だと感じています。
膀胱がんは再発を繰り返し、全摘出しなければならない場合もあります。現在は摘出手術もロボット手術で患者さんの負担も少なくなりましたが、術後は尿を出すためにお腹にストーマーという袋をつけたりなど、生活の質の面で苦労することもあります。だからこそ、早期に根治まで持っていく事が重要なのです。
膀胱がんは喫煙者ほど発症しやすく、非喫煙者と比べて約2~4倍、発症のリスクが高まると言われています。
赤色や褐色の尿が出たり、膀胱炎の症状(頻尿や排尿時の痛み、残尿感など)が見られるときには膀胱がんを疑って検査をする必要があります。
「血尿は出たけど1回で止まったから大丈夫だろう…」ではなく、一度でも血尿があればどこかに異常があるということです。
気になる症状は放置せずに、いつでも私たちにご相談いただければと思っています。
膀胱がんの光力学診断(PDD)についてのお問い合わせ
膀胱がんの光力学診断(PDD)については、泌尿器外来までご相談ください。
TEL:087-831-7101(代表)